ファセルヴェガ ファセル6

新時代の高級車、ファセルヴェガ。

フランスにはシトロエンやルノー、プジョーなど老舗の自動車メーカーが存在する。こうした中で、ファセルが大量生産の大衆車を製造、販売しても敵わないことは明らかだ。ファセルが狙ったのは高級車市場であった。

フランスの高級車と言えば、ブガッティとかドラージュといった戦前からのメーカーが存在していた。しかし戦後は、そうした高級車メーカーが力を無くしていた。戦争で工場が被害を受けたということもあったが、何よりも高級車そのものが売れなくなっていたからである。

しかも、フランス政府により大衆向けの中型車や小型車が優遇されていた。贅沢で燃料を消費する高級車は、戦後復興に不適格だというわけである。

新たな戦後型の高級車が存在していない、そんな市場にファセルは敢えて乗り込んだのである。1954年、ファセルはファセルヴェガの製造、販売を始める。

最初のファセルヴェガは、全長4500mmの大型車で、排気量4500ccのV8、つまりV型8気筒エンジンを搭載していた。ボディは柔らかな曲線が特徴的で、重厚感のあるスタイル。さらに内装には豪華な家具をイメージさせる革張りを施し、ダッシュボードも職人の手作りによる革張りで、後に木目調パネルも加わった。

ファセルヴェガFVの写真
ファセルヴェガFV
1955年製のファセルベガFVである。ファセルヴェガの最初のモデルとして1954年のパリ・モーターショーに出展され人気を集めた。曲線を用いた優雅なデザインで、その心臓にはV8エンジン。2ドアクーペだが、ウインドウが広く車内は開放感がある。
Rex Gray from Southern California, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

「自分たちの車ファセルヴェガは、普通の車とは一線を画す新時代の高級車である」ファセルは、そんな主張を注ぎ込んだ製品づくりを行ったのである。

戦争が終わって10年も経たないうちにこうした高級車を製造・販売したのだが、売れる見込みはあったのだろうか。もちろん戦禍からの復興途上にあったフランスやヨーロッパの各国では売れるとは考えていなかっただろう。

ファセルヴェガの室内を撮影した写真
ファセルヴェガの室内
シートやドアの内側は革張り。ダッシュボードの上側にも革が張ってある。そして計器盤のパネルは木目調だ。ハンドルのスタイルがいかにも50〜60年代の高級車といったイメージである。これは、1961年から製造されたファセルヴェガ ファセルⅡの室内である。
Thomas Vogt from Paderborn, Deutschland, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

次ページ
フランス車の誇りを、アメリカ向けに。