カー、クーラー、カラーテレビ、いわゆる3Cが新三種の神器として庶民の憧れとなったのは昭和40年代に入ってから。昭和30年代には自家用車を持つというのは、まだまだ夢の話でした。この家族が乗っているのもマイカーではありません。知人の自動車でドライブを楽しんでいます。
場所は箱根の十国峠。開業したばかりのケーブルカーに乗ろうというのでしょうか。母親の服装を見ても、家族にとってドライブは特別なレジャーだったことがわかります。そういえば、白黒写真があたりまえなこの時代に写真もカラーと奮発しています。
写真から昭和を見つける
箱根の山
箱根の外輪山である。この辺りは背丈の低い植物が多いため見晴らしがよい。写真には写っていないが、左の方には富士山が見えているはずである。
料金所
十国自動車道は、昭和39年の12月まで有料であった。その料金所である。現在は静岡県の県道となっているためこの料金所は無い。
自動車のボンネット
ここまで長い坂を上り続けてきたためオーバーヒート気味のエンジンを冷ます必要があったのだろう。後ろの自動車はボンネットを開けている。ボンネットマスコットの形状からすると外国車のようである。車種は不明。
十国自動車道
熱海峠から箱根峠までを結ぶ観光用の自動車専用道路である。昭和7年8月に開通した。開発は駿豆鉄道(現在の伊豆箱根鉄道)である。
駐車場
十国峠山頂までケーブルカーが通っているが、そのケーブルカーの駅に併設されたドライブインの駐車場である。ドライブインの開業は昭和39年1月。この写真が撮られた時にはすでに開業していたと思われる。
子供たち
滅多に乗ることのない自動車に乗ってはしゃいでいる。どちらが助手席に座るかで揉めたりした。
三角窓
自動車のサイドの前側につく小さな窓。写真のように開くことができた。現代の車にはないが、走行中に開くことで外気を取り入れ車内を換気することができた。まだカーエアコンが一般的ではなかった時代の窓である。
写真の日産セドリックの三角窓は、パノラミックウインドウの影響で三角ではなく四角であった。
母親
白でまとめたファッションに真珠のネックレス。たとえ近くの観光地を巡る気軽な旅であっても自家用車で巡るとなると話は違ってくる。正装でなければならないのである。
自動車
黒のセダン型乗用車。初代の日産セドリックである。昭和35年から販売されていた排気量1900ccのタイプで、フロントウィンドウが曲面ガラスによるパノラミックウィンドウとなっているのが特徴である。この頃の高級乗用車にはアメリカ車の影響を強く受けたスタイルが多かった。