庭で遊ぶ

昭和33年ごろ 神奈川県川崎市で撮影

幼児が親に連れられて公園に遊びに行く「公園デビュー」といった習慣は、昭和30年代にはまだありませんでした。でも、子供の方は公園のお砂場なんて所へいかなくとも、シャベルさえあれば周りのすべてを遊び場にしたものです。
子供は穴を掘るのが大好きです。とにかく無性に穴を掘ります。少し知恵がついてくると、穴を掘って虫を埋めて遊びます。もっと知恵がつくと、掘った穴をうまく隠し、だれかを落として喜びます。無邪気なものです。

写真から昭和を見つける

布団干し
この脚立のようなものは、布団干しである。現代のように折り畳み式ではないので、使っていないときにはジャマになるようだが、長靴が干してあることからわかるように、いろいろな物の干場になった。結構便利に使えたようだ。

長屋
平屋で2軒以上の世帯が壁一枚でくっついている建物が長屋であり、そんな長屋が数軒建っている、というのがよくある都会の住まいの形であった。
隣の声や物音が筒抜けであるが、うるさいと文句を言う住人はいなかった。

竿
洗濯物を干すときに使う竿である・・・と思われる。この時代、金属製や樹脂製の物干し竿はまだ登場していない。だが、昭和30年代の後半には、竿に樹脂をかぶせ、お湯をかけて密着させるという商品が出てきている。


昔はこんな板壁が多かった。現代的に言うならサイディングである。今では消防の規制から、木がむき出しのこんな外壁はできない。

坊ちゃん刈り
額のあたりの髪の毛を横一線に切りそろえてある。坊ちゃん刈りである。別にお坊ちゃんではなくとも、子供は坊ちゃん刈りと決まっていた。

ちゃんちゃんこ
ちゃんちゃんこと言えば「ゲゲゲの鬼太郎」が思い出されるが、当時はまだ存在していない。紙芝居の「墓場鬼太郎」はもうあったかもしれない。
どちらにしてもこの子は、鬼太郎のまねをしてちゃんちゃんこを着ているわけではない。

シャベル
子供のおもちゃとは言え、木製の柄に金属の歯がついた本格的なシャベルである。今の安全玩具のようなチャチさはない。だから、硬い土でも穴はどんどん掘れるのである。


庭と言っても長屋の庭は住民の共同の物干場であり、社交場でもあった。ゆえに、芝生を植えようだの、石を置こうという庭ではない。ただ片隅に花壇があって、朝顔やひまわりなどが植えられていた。