最初はBMW340だった、EMW340。
ここで紹介しているEMW340は、アイゼナハで1949年から55年まで製造された車である。戦前の1936年に登場した人気車BMW326の改良型でもあった。ゆえに最初はBMW340として製造されていた。
BMW340は、フェンダーとライトが一体化し、三角形の大型ラジエターグリルを付けた車として1949年に登場。フロントをBMWの象徴でもあった左右対称のグリル、キドニーグリルにしなかったのは、戦後という新時代に対応した車であることを訴えたかったのかもしれない。そして、この車のフロント先端には、青と白のBMWのエンブレムがしっかり付けられていた。
1952年、ソ連はアイゼナハ工場を東ドイツに売却する。東ドイツの国営企業となるのである。そうなってくると、BMWの商標問題が浮上する。西ドイツのミュンヘンにあったBMW本社が、東ドイツのアイゼナハ工場に対し、BMWの商標やエンブレムの権利を主張したのである。勝手に使うなというわけである。
BMWをEMWに変更するのだが・・・。
そこでアイゼナハ工場は、社名をEisenacher Motorenwerkに変更し、EMWとする。全くBMWとは違う名前ではなく、“アイゼナハで作るBMW”という意味を持つ名前に変更するのである。しかもエンブレムもBMWの青・白に対し、赤・白で同様のデザインとした。
どうしても、“我が社はBMW”という誇りから逃れられなかったのだろうか。いや、やはりBMW車のイメージを利用したほうが顧客の受けがよかったからなのだろう。それで、1952年からはBMW340は、EMW340となって、赤・白のエンブレムを付けて売り出されることになるのである。
こんな事情があったわけだが、この車EMW340は、戦前の人気車BMW326をベースに生まれた革新的な機構を持つ車で、使いやすさも戦前の車より向上していたため人気を得ることとなる。戦後まもない時期ではあったが、ヨーロッパの西側諸国にも輸出されている。やはり、BMW車としての確かな品質が喜ばれたのだろう。

EMW340のフロント先端に付けられたエンブレム。赤と白で構成されている。赤を青に代えればBMWである。
【Späth Chr., Public domain, via Wikimedia Commons】

旧東ドイツのライプツィヒで1951年に撮影された写真である。停車中の路面電車の脇を走り抜ける姿が美しく捉えられている。当時の東ドイツの人々にも人気のカッコいい車だったのである。
【Deutsche Fotothek, CC BY-SA 3.0 DE, via Wikimedia Commons】
