ヘラルドは、スタンダード社の車の後継だった。
さて、メーカーのトライアンフだが、トライアンフは、19世紀に自転車の製造、販売からスタートしている会社だ。20世紀に入るとオートバイの製造をはじめ、1930年代からは自動車、それも高級車のメーカーとなった。だが、財政的な問題にぶつかり、第二次世界大戦には被害を受け、戦後は同じイギリスの自動車メーカーであるスタンダード社に買収される。
それでこのトライアンフ ヘラルドが登場した頃は、トライアンフ社ではなくスタンダード・トライアンフ社がメーカーであるわけだ。このヘラルド、実は、スタンダード社が製造していた人気小型車スタンダード8やスタンダード10の後継車でもある。
スタンダード社は、1903年に創業したイギリスの老舗自動車メーカーだ。1920年代には当時のトップメーカーオースチンと肩を並べるほどの会社に成長した。そして、第二次世界大戦後にはすぐに乗用車の生産を始めるが、そこで力を入れたのは戦前から製造していたスタンダート8やスタンダード10といった小型車だった。
1950年代に戦後型の車として、ボンネットとヘッドライトが一体になったデザインのスタンダード8、10を登場させる。戦後すぐに流行したいわゆるポンツーン型デザインの車である。なかなかかわいいイメージの車で好感が持て、ヒットもするのだが、ここ!というインパクトのある車ではなかった。

1938年から製造を始めたスタンダード社の小型車。これは1939年型だ。縦長のラジエターグリルが面白い。シンプルだが好感の持てるデザインである。
【Charles01, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】

1958年型のスタンダード8。40年代から50年代によく見られた丸いデザインで、ボンネットとヘッドライトの区分がないポンツーン型である。フロント部分のデザイン処理がなかなか個性的だ。
【Vauxford, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
1950年代後半となるとモーリスやイギリス・フォード、オースチンなどイギリスの自動車メーカーは、さまざまな戦後型の車を登場させて来ており、生き残るためには一般向けの小型車としてインパクトのある新型を投入しなければならなかったのである。
そこで、イタリアンデザインのトライアンフ ヘラルドの登場となる。ヘラルドという言葉には、「先触れ」とか「先駆け」という意味がある。ヘラルドは、まさに時代の先駆けの車となることを目指していた。スタンダード・トライアンフ社の力の入れようがわかるネーミングでもある。
