ド・ディオン・ブートン トラクター

パリ・ルーアンレースでの活躍。

パリ・ルーアンレースとは、正式名を「パリ・ルーアン プチ・ジャーナル馬なし車コンテスト」と言う。長い名前だが、当時の自動車に対する人々の理解のほどがわかる。

このレース、フランスのパリからフランス北西部にある都市ルーアンまでの126kmを走る自動車レースである。レースなのだがスピードを競うものではなく、「危険ではなく、運転しやすく、移動にかかる費用が安い」理想的な車に賞が与えられるというものだった。

プジョーやパナールなど、当時のガソリン自動車の有名メーカーや蒸気自動車メーカをはじめ、アマチュアが製作した自動車なども参加したようだ。

行われたのは1894年7月で、レースに先立ち参加自動車の展示会と予選が行われた。レースと言うよりも自動車ショーに近いもので、まさに、自動車という馬なし車の一大イベントだったわけである。ここに、ド・ディオン・ブートン トラクターも出場した。

パリ・ルーアンレースを描いた絵
パリ・ルーアンレースの絵画
レースのスタートの様子が描かれている。手前の車は、プジョーである。これは、1894年8月5日付け『ル・プチ・ジャーナル』紙の表紙に掲載されたものだ。
Image signed by T.Belack ? Artist name lost to history ? 118 years old., Public domain, via Wikimedia Commons】
パリ・ルーアンレースの様子
パリの西にあるマント・ラ・ジョリーの通りを走る参加車の様子を写したもの。人や馬車の通る普通の道をレースカーが走ってゆく。車のスピードが今ほど出ないからだろうが、優雅なものである。
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このレース、蓋を開けてみると、なんと最初にルーアンのゴールテープを切ったのはド・ディオン・ブートン トラクターであった。パリ・ルーアン間を6時間48分で走ったと記録にはある。

当時の最新鋭はガソリン車であり、人々はガソリン車が活躍するだろうと思っていたのに、先頭を走ってきたのは蒸気自動車、しかもトラクターだったのだ。

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蒸気自動車がトップでゴールはしたが・・・。