貝原益軒 八十二歳
健康で長生きをしたい。これは誰もが願う事柄ある。今から三百年ほど前、健康で長生きをするための実践的な方法を人々に説いた人がいる。貝原益軒である。
その時益軒八十二歳。実に自らの体験から、食べ方、飲み方、住まいの在り方、排泄、入浴、医者の選び方、薬の飲み方など、こと細かに健康法を書きつづった。
「人間、持って生まれた身体が大事じゃ。天からもらった命を粗末にしてはいけない」
これが、彼の本『養生訓』の基本であった。
当時、封建性の下では、自分の命は君主のために鴻毛(こうもう)の軽きにおけと言っていた。そんな時代に、益軒は堂々と『自分の命を大切にせよ』と説いたのである。
益軒は、晩年にこの『養生訓』の他、『和俗童子訓』を含む『益軒十訓』など多くの著作を成している。また、夫婦で各地に旅行もしている。益軒の老後の健康法の極意は、落ち着いてしまわず、新しきものを求めて、常にたくましく生きることにあったと言えるだろう。
『心は楽しむべし、苦しむべからず。身は労すべし、やすめ過ごすべからず』
貝原益軒(1630~1714)
福岡県出身。長崎、江戸、京都に学び、福岡藩に儒学者として仕える。『養生訓』などの他、儒学・本草学・教育など多くの著書を残した。