犬猿の仲であった薩長を結びつける。

坂本龍馬 三十歳

激動の幕末、日本中が討幕か佐幕かで大揺れに揺れていたその時に、たった一人で討幕への道をつけた男がいる。坂本龍馬である。

「幕府はどうしても倒さなければならない。知ってますか桂さん、アメリカの大統領は、奉公人の給金の心配するんですよ。将軍は奉公人の給金の心配してますか」

あるとき龍馬は、桂小五郎にこんなことを語ったと言う。彼の先見性と国際感覚がよくわかる逸話である。それだからこそ、一介の浪人である龍馬が、薩摩と長州という犬猿の仲である藩、それも大藩同士を結びあわせると言う大役を果たせたのであろう。

龍馬の人間的魅力もさることながら、将来を見越した発言の説得力と、海援隊という組織をひとりで築いてしまった実行力に、薩摩も長州も並々ならぬものを感じたに違いない。

薩長連合は、京都の薩摩藩邸で龍馬の仲介により結ばれた。その時、坂本龍馬三十歳であった。

坂本龍馬(1836~1867)
土佐に生まれた幕末の志士。土佐藩脱藩の後、海運と貿易をめざした亀山社中を組織した。薩長連合の成立にも奔走する。