日本初のスペシャリティカー。
トヨタ自動車は、このセリカを”日本初のスペシャリティカー”と銘打ち発売した。そもそもスペシャリティカーとは何か。特別に誂えた車、選ばれた車という意味があるが、当時の車大好き人間たちにはこの言葉が刺さった。セリカ以降、他の車種でもやたらにスペシャリティカーが登場した。日本人はスペシャリティに弱い。
しかもトヨタ自動車は、この言葉を言葉だけに終わらせなかった。セリカは購入に当たってフルチョイスシステムを採用した。エンジン、トランスミッション、内装、外装などを組み合わせることで、自分だけのセリカを注文することができたのだ。まさしくスペシャリティ、特別製の車であった。
昭和48年(1973年)のカタログ
各グレードの外観、内装、エンジンなどが掲載されている。フルチョイスシステムの説明もある。
各グレードの外観、内装、エンジンなどが掲載されている。フルチョイスシステムの説明もある。
また、セリカは、他のクーペに比べ値段が安いという点でもスペシャリティであった。当時の価格で約80万円、高いグレードでも100万円強であった。特別な自分だけのオーダーメイドを気軽に手に入れられるということで、車好きの心を掴んだのだ。
「車が持てればよい」から「カッコいい車を持ちたい」へ。
この車が登場した昭和45年(1970年)と言えば、大阪万博の年。戦後の高度経済成長も頂点に達していた時期である。
人々の生活も豊かになり、大衆車のトヨタカローラやダットサンサニーが販売合戦を繰り返していた。自動車を持つことは、すでに夢ではなくなっていたのである。そうなると、単に車を持つことではなく、どんな車を持つかが関心の的になってくる。
車を欲しがるのはやはり男性、それも若い男性たちである。彼らは、どんな車を持ちたがるのか。当然カッコいい車である。そこにセリカという名のスペシャリティカーが登場した。このカッコいい車に乗れば、街をゆく人がみんな振り向くだろう。こんなのに乗っていたら女性にモテるだろう、そんな妄想も生まれる。
