ルノー12

ルノー12のもうひとつの目的とは。

さて、普通の車を作るという注文には、もうひとつの目的もあった。それは、国外での生産に対応できる車という目的である。

ルノーには、自社の車を外国で売る、それも地元のメーカーにライセンス生産させるという戦略があった。そうなってくると、どこの国でも生産できるということが必要になってくる。最新の設備に乏しい国でも効率的に生産できる車でなければならず、機構やデザインが常識的で製造しやすい車が求められたのである。

ルノー12の常識的な機構やデザインは、海外でのライセンス生産にも適合し、多くの国で現地生産されるようになった。

ルーマニア、ユーゴスラビア、トルコ、ブラジル、コロンビア、アルゼンチン、オーストラリアなどを挙げることができるが、これらの国の現地の自動車メーカーや、現地のメーカーと提携したルノーの現地法人などによって生産されたのである。

ダチア1300
ルーマニアのダチア
ルーマニアでは、ルノー12は、現地の自動車メーカーであるダチアが製造した。写真は1973年製のダチア1300ベルリナである。
dacia24.de, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
ルノー12の広告
アルゼンチンのルノー12の広告
1971年の広告である。白砂の上に赤い車と赤い衣装をまとったモデルを配置。ルノー12を未来的なイメージで訴求している。なお、アルゼンチンではルノーの現地法人によって製造された。
Here, Public domain, via Wikimedia Commons】

ルノー12はきわめて普通の設計であったため、どこの国でも量産ができた。しかも現地に合わせた改良も施され、独自の名前を付けて販売され、各国で人気を得たのである。

ルノー12のフランス国内の製造は1980年で終了したが、国外では2000年代の半ばまで生産が続けられていた。それだけ人気の車であったし、生産も行いやすかったのである。結局累計で250万台も生産されたヒット車となる。

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現地生産を考えた車づくりは70年代から。