ホンダ S800

S800でもアピールは終わらない。

さて、このS500発売の半年後には、排気量をアップしたS600が早くも発売され、その2年後の昭和41年(1966年)にS800の登場となる。S800は、排気量がさらにアップし、後輪の独立懸架サスペンションなどスポーツカーとしてのスペックをさらに高めた車であった。

S800は、第1弾のS500と基本的にデザインやスタイルは変わらない。しかし、フロントグリルがそれまでのシンプルなものから2本の横棒を通し真ん中にホンダのエンブレムを掲げたものになった。ホンダの車だと主張しているのだ。今のホンダ車と同じである。ホンダは四輪を作るメーカーだという強い意志の現れなのだろう。

また、これまでのSシリーズとはもう一つ違うデザインがある。それはボンネット上のパワーバルジだ。パワーバルジとは、ボンネットの小さな膨らみのことである。パワーアップ等によりエンジンの大きさが変わった場合、そのエンジンをボンネット内に収めるために付けられることがよくある。

ホンダ S800
ホンダS800
黄色のS800の実車。栃木県のモビリティリゾートもてぎに展示してあったもので2009年に撮影された。グリルの中央にはホンダのエンブレム、そしてボンネットにはパワーバルジが見える。
Kzaral, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

しかし、このS800のパワーバルジは、当時の製造部門の話によるとダミーだそうである。つまりカッコ付けなのである。やはりここでも、ダミーを付けてでも、「カッコいいスポーツカーを製造、販売するメーカー」をホンダはアピールしたかったのだろう。

バイク屋ではなく自動車会社を目指す当時のホンダは、なかなか徹底していたのである。

ホンダS600とS800のCM
発売当時のCMである。F1に参戦する技術のホンダが作ったスポーツカーと訴えている。S600の方はビジネスにレジャーにと多様に使える車であることを宣伝しているが、S800の方は車としての性能を強調している。しかも、S800は、全編英語のナレーションで畳み掛ける。とにかくカッコよさが売りなのである。