フォード コルティナ

新たな価値観の逆を行って、ベストセラーに。

フォードコルティナの生まれた1960年代は、カウンターカルチャーの時代とも言われ、それまでとは異なる価値観が広がった時代でもあった。そのカウンターカルチャーの象徴とも言われているのがイギリス生まれのアーティスト「ザ・ビートルズ」である。

そして、彼らの愛した車と言えばミニであった。実際にビートルズのメンバーそれぞれがお気に入りのミニを所有しており、その中の1台がビートルズ製作、主演の映画にも登場する。

世界的なグループの愛した車はやがて世界に認められる名車となるわけで、ミニは新しい時代の価値観を持っていた車と言えるのだろう。ところが、当然新しい価値観には馴染めない多くの人々もおり、彼らに向けて作られたのがコルティナということになる。

しかも、コルティナのターゲットは若者でも車好きの人でもなく、家庭を持つ普通の人であった。フォードは、普通の家庭を持つ普通の人は、普通の車を求めると考えたのである。要するにフォード・コルティナは、庶民が家族用の車を持ち始めた時代、1960年代のいわゆるファミリー・カーだったと言えるだろう。

コルティナ宣伝フィルム①
コルティナを宣伝する1962年のフィルム。ショールームに来た人たちが自分が運転しているところを空想して喜ぶ様子を描いている。ほのぼの路線のドラマになっているところが面白い。
コルティナ宣伝フィルム②
こちらのフィルムでは、ある家族がコルティナで海辺の街までドライブし、釣りや海水浴を楽しんだりする。登場する車はバンタイプで、たくさんの荷物が積めることを強調している。

結局コルティナは、価格と使いやすい大きさの面で評判となり、発売3ヶ月で6万台も売り上げることとなった。フォードの狙いが見事に的中したのである。

そして、初代のMk1発売後すぐに馬力をアップしたタイプが投入されバリエーションも充実。さらにモデルチェンジも頻繁に行われ、第5世代のMk5までおよそ20年の間作り続けられた。

フォードコルティナは、ミニのように時代を象徴する名車という誉れこそ受けなかったが、庶民のニーズに応え続けたベストセラーのファミリー・カーとなったのである。

コルティナテスト走行
これも1962年の宣伝フィルムである。コルティナの走行性能をアピールしている。当時はこうしたフィルムが多く作られたようだ。現在のような短いCMではなく、じっくりと性能を説明する広告だったのが興味深い。