シトロエン ディアーヌ

「2CVとはどんな車?」から考える。

なぜ、2CVではダメだと考えられたのだろうか。そもそも2CVの開発コンセプトは「農家で使う車」であった。2CVの企画、開発が進められていた頃のフランスの農家と言えば、手押し車に家畜の引く車が主な移動手段であった。そこで、農家で便利に使うための車として作られたのだ。

当時の開発目標として、50kgのジャガイモを載せられるとか、カゴいっぱいの卵を載せて農道を走っても卵が割れないと言うのがあった。もちろん、誰でもすぐに購入でき、維持費が安いという条件もあった。そうした目標のもとで、小さなエンジンで力強く、しかも揺れが少ない快適な車が誕生する。そんな状況であるから車のデザインは二の次であった。

農村風景の中の2CV
農村の2CV
フランスドルドーニュ地方の農村で見られた2CVである。パネルバンタイプではあるが、2CVはもともとこうした場面で使われることを想定していた。
Niels de Wit from Lunteren, The Netherlands, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

農家での実用性を追求した結果生まれた2CVは、とても奇妙なスタイルの車となる。モーターショーで発表したとき、人々はとても困惑したという話が伝わっている。マスコミは2CVを「乳母車」とか「みにくいアヒルの子」と揶揄し、立ち会ったフランス大統領も言葉を失ったそうである。

ところが、マスコミの評判はイマイチだった2CVも、ユーザーとなる大衆には大いに受け入れられるのである。形はどうでも、経済的で実用的というのはやはり大きなメリットなのである。登場2年後の1950年には、月産400台の生産が行われるようになる。その後2CVは、排気量の拡大や内外装の改良が加えられ、さまざまな派生モデルも生み出されるなど、フランスの国民車として認識されるようになっていった。

家並みの中の2CV
住宅と2CV
場所ははっきりしないが郊外の住宅地で2013年に撮られた写真である。2CVが2台あり、今も愛用されているのがわかる。よく見ると塀の後ろにディアーヌも駐車している。
grassrootsgroundswell, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

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2CVのいいとこ取りでリニューアル。