普通の車とは違うスタイルが仇になった?
コルト 800や1000Fは、サニーやカローラと同様、大衆車である。はじめて車を持とうという人が、自分でも手に入るマイカーとして購入を考える車でもある。そんな人々はとにかく自分の家の乗用車を持ちたいのである。そのマイカーは、子供の頃から「自動車」として思い描いてきたものでなければならない。
確かにコルトはファストバックの個性的でスマートなスタイルである。しかし、これから初めて車を持とうという人にとっては、個性的なスタイルというより、普通の乗用車が良いのである。
コルト1000Fのリアビュー
ファストバックスタイルがよくわかるコルト1000Fの実車の写真。当時の日本人には、このスタイルがまだピンとこなかったのである。なお、この車はトヨタ博物館の所蔵車のようだ。
【Ypy31, CC0, via Wikimedia Commons】
ファストバックスタイルがよくわかるコルト1000Fの実車の写真。当時の日本人には、このスタイルがまだピンとこなかったのである。なお、この車はトヨタ博物館の所蔵車のようだ。
【Ypy31, CC0, via Wikimedia Commons】
普通の乗用車が欲しい庶民にとっては、なだらかにバックにまで屋根のラインが伸びているこの車は、「なんだ酒屋のライトバンみたいだ」となったのかもしれない。それに比べ、サニーやカローラは誰が見ても普通の乗用車だった。
要するに大衆向けの乗用車市場は、当時はまだ成熟していなかったのだ。三菱重工の個性や新しさを求める姿勢は良いのだが、自動車に対する当時の庶民の思いを見過ごしていたことに敗因があったのである。もちろん、今だったらこうした個性は受け入れられることだろうが。
コルト1100F動画
現存するコルト1100Fを紹介する動画。外観やエンジンなどを見せているが、今も新車のように美しく保たれているのが素晴らしい。
現存するコルト1100Fを紹介する動画。外観やエンジンなどを見せているが、今も新車のように美しく保たれているのが素晴らしい。
