タクシー専用車を一般向けに。
こうしたタクシー王マーキンの自動車メーカーであるチェッカー・モーターズの作ったタクシーは、戦前から人気を得、1950年代の中頃になるとアメリカの各地で使われるようになっていた。
さて、チェッカー マラソンの元となったタクシー専用車であるが、その車は、1956年に登場したチェッカー タクシーキャブA8型である。ヘッドライトとボンネットが一体になったいわゆる戦後型のスタイルで、車内は広く、頑丈さが売り物であった。
A8型は、ライトが4灯式となり、グリルやテールライトの形が変更されるなど、少しづつ改良が加えられるが、1960年に、タクシー専用のA9型と、一般向けセダンのA10型が発表される。そのA10型の高級版A12型がチェッカー マラソンである。
では、なぜタクシー車両製造メーカーであったチェッカー・モーターズが一般向けの車を製造、販売するようになったのだろうか。詳しい経緯はわからないが、やはり乗りやすく、頑丈なタクシー車両は、一般向けの車としても売れると判断したのだろう。

どっしりとしたイメージ。大きなラジエターグリルで、印象深い顔つき。後部の座先が広く、快適そうである。タクシーそのものを乗用車にしたのであるから当然である。
普段使いの車は、タクシーがいい?
1960年代になるとアメリカの一般向けの乗用車は、低く、幅が広く、スマートなスポーツカータイプの車が好まれるようになる。さらに、そうした車にパワフルなエンジンを載せたマッスルカーへと進化してゆく。高速道路をスマートな車でぶっ飛ばすというのがその頃のアメリカのカーライフのイメージでもあった。
でも、その一方で、普段遣いの車はそんなにぶっ飛ばす必要はなく、何よりも車内が広く、乗りやすく、運転しやすいのが一番であると考える人も当然いただろう。その頃流行りのカッコいい車は車高が低く、乗りにくく、しかも狭いのだから。
やはり普段使いの車は、車高が高く乗りやすいタクシーのような車がいいのである。さらに、タクシーは運転手が1日中乗っているのだから運転しやすくできており、安全性も確保されている。また、トランクが広く使い勝手もいいし、何よりも頑丈で壊れにくいのだ。

ゴルフ場をバックに描いた1965年のイラスト広告である。ファミリーカーとしてレジャーに使ってほしいとのメッセージが読み取れる。
【1965 Checker Marathon 4-Door Sedan by aldenjewell, on Flickr】

「チェッカーマラソン・ザ・スーパーカー」というキャッチフレーズが踊っている。マラソンはタフで、長く乗れ、快適で室内も広いスーパーカーなのである。ナショナルジオグラフィック1968年5月号の広告。
【Checker Marathon by dok1, on Flickr】
こう考えると、タクシー車両の一般向けバージョンであるチェッカー マラソンは、車を毎日使う人にとってはいいこと尽くめで、売り出せばヒット間違いなし・・・とチェッカー・モーターズは考えたのかもしれない。だが、実際はそれほど売れなかったようだ。
