フォルクスワーゲン タイプ2

タイプ2のヒントは工場内にあった。

さて、タイプ2であるが、この車の開発にあたっては面白い話が伝わっている。1947年にタイプ1がオランダに輸出されることになり、オランダの自動車ディーラーが工場見学に訪れた。そのディーラーが、工場内で使われていた配送用車両を見て、この車両が貨物自動車になるのではないかと提案したことが、タイプ2開発のきっかけとなったのである。

当時の工場内の配送用車両は、タイプ1のシャーシをベースに作られたもので、後部のエンジンの上に運転席を乗せ、前方に木製の荷台が付いたものだった。これで、工場内で部品や工具、部材などを運んでいたのである。オランダのディーラーは、この配送車を元に運転席を前にしたパネルバンを作ったらどうかと考えた。そこで、簡単なスケッチとともに提案したそうである。

荷物を積んだ配送用車両
工場内で使われていた配送用車両
タイプ1のシャーシに大きな荷台を取り付け、運転席は後部のエンジンの上に設置してある。タイヤのリムにVWのロゴが刻印されているので元がタイプ1であることがわかる。こんな配送車にオランダのディーラーが目を付けたのだ。
Bundesstefan, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】

当時のフォルクスワーゲンにはタイプ1しかなかった。人気があり、生産も順調であったが、タイプ1だけでは自動車メーカーとして心もとなく、製造車種を広げなければ発展は見込めないことがわかっていた。そこでフォルクスワーゲンは、タイプ1をベースにしたキャブオーバー型の商用車であるタイプ2の開発を本格的にスタートさせるのである。

発売されるやヒットしたタイプ2。

フォルクスワーゲンタイプ2は、タイプ1をベースにしているため、エンジンはリアに搭載されている。そのため、車体の大きさに比べ運転席も荷室も広く、商用貨物として便利な車となった。

当時の貨物車はまだ戦前からあるボンネットトラックが普通であった。ボンネットがなく、スペース効率の良い箱型の車はまだまだ少なかったのである。しかも、信頼性の高い乗用車であるタイプ1がベースのため、耐久性に優れ、商用の貨物車ながら乗り心地がよいというメリットもあった。

タイプ2は、1950年から発売が開始されるが、発売されるやいなや人気を呼ぶ。ドイツを中心にヨーロッパやアメリカで好評を得たのである。しかも、この車、運転席から後がすべて荷室となるパネルバンだけでなく、後部にも窓のついたバンや荷台だけが付いたトラックタイプ、多くの座席がついた小型バスタイプなど多種多様な車が製造、販売された。

タイプ2のバンタイプとバスタイプ
タイプ2のバンとバス
後部がすべて荷室のバンと、後ろを客室にしたバスタイプ。バスタイプは別名サンバとも呼ばれるが、サンバという名前の方が馴染み深いかもしれない。
タイプ2のトラックタイプ
トラックタイプ
後ろを荷台としたトラックのタイプ2。花屋の車のようだが、上に幌をかぶせたこのスタイルがまた絵になる。車は1961年製とのことである。
JoachimKohler-HB, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】

次ページ
箱型という特徴が商売に貢献。