アメ車のようなイギリス車を受け入れた人物とは。
ところがである。車の流行や好みというのはわからないもので、なんとこの車、当時のイギリスの女王、エリザベス2世が私的に使う車となる。上流も上流、イギリス社会の頂点に立つ人物の愛車となったのである。
エリザベス女王は、第二次世界大戦中、志願してイギリス陸軍で車両整備や軍用トラックの運転を行っていた。そのため、自動車を自ら運転することが好きで、プライベートで使用する車も多かった。ランドローバーやジャガー、イギリスフォードのゼファーなどのイギリス車を所有していたようである。
ボクスホール クレスタ エステートも、そんなエリザベス女王の愛車の一つであった。自らハンドルを握り愛犬たちを乗せて、郊外の別邸の周辺で使っていたとのことである。アメリカ車的なこの車をイギリスの女王が運転しているところを想像すると本当に面白い。

第二次大戦中のエリザベス王女
1945年4月に撮影されたもの。当時はまだエリザベス王女であった。後ろのトラックは軍の救急車のようだが、彼女はこうしたトラックの運転などを行っていた。
【Ministry of Information official photographer, Public domain, via Wikimedia Commons】
1945年4月に撮影されたもの。当時はまだエリザベス王女であった。後ろのトラックは軍の救急車のようだが、彼女はこうしたトラックの運転などを行っていた。
【Ministry of Information official photographer, Public domain, via Wikimedia Commons】

サンドリンガム・ハウス
イギリスのノーフォーク州サンドリンガムにある女王の別邸。エリザベス女王は、この別邸の周辺でボクスホール クレスタの運転を自ら行っていた。
【John Fielding, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】
イギリスのノーフォーク州サンドリンガムにある女王の別邸。エリザベス女王は、この別邸の周辺でボクスホール クレスタの運転を自ら行っていた。
【John Fielding, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】
また、1970年代になると、今度はこのクレスタが、テディボーイと呼ばれたロックンロール好きの若者たちの間で流行した。テディボーイたちは、改造された中古のクレスタに乗り、自分たちの存在を主張した。いわゆる彼らのファッションアイテムにもなったのである。
ここで結論である。ボクスホール クレスタは、このようにイギリスの女王陛下から若者たちにまで愛された車であった。ということはこの車、アメリカ車のようなスタイルだが、まさにイギリスの国民車であった、とも言えるのだ。
クレスタ エステートの動画
1960年モデルのクレスタ エステートを撮影した動画である。外観から内装、走行中、走る姿などをコンパクトにまとめて見せてくれる。荷室が結構広い車であることも実感できる。
1960年モデルのクレスタ エステートを撮影した動画である。外観から内装、走行中、走る姿などをコンパクトにまとめて見せてくれる。荷室が結構広い車であることも実感できる。