ボクスホール クレスタ

戦後型のボクスホール車は、アメリカン。

1940年代の半ば、第二次世界大戦が終わり自動車の生産が再開されると、ボクスホールも戦後型の車を送り出すようになる。その戦後型の車にヴェロックスがある。戦前の車とは一線を画す設計、デザインの車であった。クレスタは、そのヴェロックスの高級バージョンとして製造、販売された。

初代クレスタは、1954年に生産が開始された。2.3リットルの直列6気筒エンジンを搭載し、装備も充実。内装や車体のカラーリングも選択できるなど、まさに高級車であった。そして1957年に登場した二代目クレスタが、このページで取り上げている車である。ボクスホールが戦後に出した車の中では最も有名な、つまり話題となった車でもある。

ところが、二代目クレスタが話題を呼んだのは、高級車だからというよりもアメリカ車的スタイルの方にあったようだ。ボクスホールは、GM傘下のメーカーでありながらイギリス人に合った車を開発してきたのだが、このクレスタは、大いにアメリカ車のイメージを取り入れていたのである。

しかも、このページで取り上げているようなエステート、つまりステーションワゴンとなると、ますますアメリカ的でもある。

ボクスホールクレスタの実車の写真
ボクスホール クレスタ
赤と白のツートンカラーが眩しい。1961年モデルのクレスタである。側面にまで回り込むフロントウィンドウや鮮やかなカラー使いがアメリカ車的イメージだ。
Mick from Northamptonshire, England, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】
クレスタのモノクローム広告
クレスタの広告
1959年の広告である。キャッチフレーズは、「みんな、ボクスホールで運転がうまくなる!」。視界の広いフロントガラスや優れたブレーキ、サスペンションなどを訴えて、安全性の高さを強調している。イラストのタッチのアメリカっぽさも面白い。
Andrew Bone from Weymouth, England, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

50年代から60年代にかけては世界的にアメリカ車のスタイルが流行していたという事実もある。確かに50年代のアメリカは、豊かで、国力もあり、世界の流行の先端・・・というか人々が夢見る暮らしの形を実現している国であった。そんな国の人々が乗り回す車を世界中の人が欲しがったのである。

GMの傘下にあるアメリカ資本の自動車メーカー、ボクスホールとしては、やっぱりこの時期はアメリカ的なスタイルでいこうとなったのだろう。

クレスタは、このように当時流行のスタイルを持つ高級車だったわけである。しかし、アメリカ車のようなこの車は、高級車であっても、保守的な考えを持つイギリスの上流階級には受け入れられないと思われていた。

ボクスホールクレスタエステートの実車の写真
ボクスホール クレスタ エステート
このページで取り上げているエステート(ステーションワゴン)の実車である。後部の形が独特なのがよくわかる。写真は、2009年のクラシックカーイベントで撮影されたもの。
111 Emergency from New Zealand, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

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