ボクスホールとは、どんなメーカー?
では、なぜこんな派手な、アメ車のような車がイギリスで製造され販売されていたのだろうか。一体どんな人たちが運転していたのだろうか。その前にまずは、この車クレスタを開発、製造したイギリスのメーカー、ボクスホールから語っていこう。
ボクスホールは19世紀の半ばにイギリスのロンドンで創業した機械メーカーである。最初は船の蒸気機関やポンプなどを製造していたが、20世紀になり、新たな乗り物として注目されていたガソリン自動車の製造を始めるようになる。
1903年には早くも1000ccの小型車を開発し、自動車業界に参入。1910年代には高性能エンジンの中型車を発売し、各地のレースでも優秀な成績を収めて信頼性のあるメーカーとしての地位を築くのである。

ボクスホールの最初の車
1903年にデビューした1000ccの小型車のスナップ。1931年にロンドンで行われたイベントのパレードで撮影されたものだ。後ろを走るのは当時のボクスホールの最新型である。
【Bundesarchiv, Bild 102-12207 / CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0 DE, via Wikimedia Commons】
1903年にデビューした1000ccの小型車のスナップ。1931年にロンドンで行われたイベントのパレードで撮影されたものだ。後ろを走るのは当時のボクスホールの最新型である。
【Bundesarchiv, Bild 102-12207 / CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0 DE, via Wikimedia Commons】

ボクスホールAタイプ
レースで優秀な成績を収めたAタイプの市販車として製造、販売された。1912年製の中型車である。貴婦人を思わせる優雅なイメージだが、軽量で高性能なエンジンが積まれていた。
【Clive Barker from Selsey, West Sussex, U.K., CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】
レースで優秀な成績を収めたAタイプの市販車として製造、販売された。1912年製の中型車である。貴婦人を思わせる優雅なイメージだが、軽量で高性能なエンジンが積まれていた。
【Clive Barker from Selsey, West Sussex, U.K., CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】
ところが、第一次大戦が終わるとイギリスの自動車市場には外国企業が参入して来るようになり、ボクスホールは経営不振に陥る。そして、1925年にはアメリカのGM(ゼネラルモーターズ)に買収され、その傘下となる。
こうしてボクスホールは、GMというアメリカ資本の自動車メーカーとなったわけだが、アメリカ車そのものをイギリスで製造、販売するのではなく、イギリスの消費者の好みに合わせた独自の車の開発、製造を続けていた。イギリス車メーカーとしての誇りもあったのだろうが、アメリカの車そのままでは売れないということがわかっていたのだ。