TR1、TR2、TR3そしてTR3A。
TR1は、少しクラシカルなイメージを残しながらオープンカーとしての新たなデザインに挑戦するといったスタイルが話題となった。そこで、翌1953年にはTR2を開発。一般向けに発売したのである。
強調された前後のフェンダー、ライトとグリルが描く顔が個性的。コンパクトで軽量ながら最高時速は170キロという高性能。しかも価格は、戦後初のジャガーのヒット車XK120の半分ほどというのだからスポーツカーファンが放っておくわけはなく、大好評となる。しかも、多くの自動車レースでも良い成績を収めることで、「トライアンフここにあり!」ということになるのである。
そのTR2の後継として1955年にTR3が登場する。外観的にはTR2とあまり変わらず、格子状のラジエターグリルが目立つデザインで、かわいいヤツというイメージになっている。
飛び出た2つのライトに奥に引っ込んだグリル。この顔は、まさに漫画のキャラクターを思わせる。
【Charles01, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
そして、TR3に改良を加えて登場したのが、このページで取り上げているトライアンフTR3Aである。ラジエターグリルが横に広がり、ライトの間隔も少し広くなった。TR3よりも洗練されたデザインだが、曲線を生かしたクラシカルなムード漂うボディデザインは変わらない。さすがにイギリスのスポーツカーという感じである。
TR3Aは、やはりロードスターだった。
TR3Aの改良点として面白いところがある。それは、ドアに外部ハンドルが付いたという点である。それまでドアの外にはハンドルが無かったのである。
確かにTR2やTR3の写真を見ると外側にハンドルらしきものは無い。基本的にオープンカーなので、ドアを外から開けるのは簡単であり、しかもドア自体が小さく、開けずにまたいで乗り込むこともできる。
でも、こんなところがトライアンフらしさでもあった。ロードスターであり走りを楽しむ車なのであるから、余計なものはいらないということなのだろう。
TR3Aで外部ハンドルが付くことにはなるが、ロードスターであるという精神は変わらない。相変わらずドアは小さく、この軽量で小さな二人乗りに2000ccのエンジンを積んでいるのだから、走り屋さんにとってはたまらない一台であった。

ハンドルの付いたドアはあるが、開けなくても跨いで入れそうな小ささだ。またそれが、この車のスタイルなのでもある。なおこの写真、フランスのナンシーで撮られたものである。やはりトライアンフは、ヨーロッパの街並みにしっくりと合う。
【Alexandre Prévot from Nancy, France, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】