SMZ S-3A

この小さな車から、ソ連が見えてくる。
ちょこんと飛び出たヘッドライトが可愛い、と言うか両生類をイメージさせる超小型自動車、マイクロカーだ。この車は、SMZ S-3A。小さな車体に排気量346ccのエンジンを載せた二人乗りで、最初に製造されたのは1958年。しかもこの車、冷戦下のソビエト連邦−ソ連の車なのである。
単なるマイクロカーではない、SMZ S-3A。
戦後、1940年代末から1950年代にかけて、各国でマイクロカーが盛んに製造され、バブルカーとも呼ばれ流行した。ドアが前に開くBMW イセッタとか、飛行機メーカーのメッサーシュミットが作ったKR200などが有名だ。日本にも富士自動車のフジキャビンという車がある。また初期の360ccの日本の軽自動車も、バブルカーの一種とする見方もある。

メッサーシュミットKR200
運転席が飛行機の風防のような三輪車。これぞメッサーシュミットのバブルカーである。1955年から64年まで約4万台が製造されたと言われている。
【Morio, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
運転席が飛行機の風防のような三輪車。これぞメッサーシュミットのバブルカーである。1955年から64年まで約4万台が製造されたと言われている。
【Morio, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】

フジキャビン
日本の富士自動車が製造した前2輪、後1輪の3輪自動車。1つ目ランプが特徴的だが、世界で初めて車体をFRPで製造した車でもあった。
【Rikita, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
日本の富士自動車が製造した前2輪、後1輪の3輪自動車。1つ目ランプが特徴的だが、世界で初めて車体をFRPで製造した車でもあった。
【Rikita, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
しかし、SMZ S-3Aは、そうした流行とは別の流れで生まれた特異な車でもある。実はこの車、福祉車両なのである。福祉車両、つまり身体障害者が乗り、運転するための車なのだ。
今の日本にも身体障害者が運転できるようシートの形状やハンドル、ペダルなどのシステムに改良を加えた福祉車両が存在する。基本的にはそれと同じなのだが、SMZ S-3Aは、通常の乗用車に改良を加えたものではなく、最初から身体障害者用の車として作られている。

S-3Aのスタイル
2人乗りのオープンカーで、幌が付く。346ccのエンジンは車体の後部に搭載されており、前部のボンネットには収納がある。こうしてみると福祉用車両ではあるが個性あるコンパクトカーというイメージだ。
2人乗りのオープンカーで、幌が付く。346ccのエンジンは車体の後部に搭載されており、前部のボンネットには収納がある。こうしてみると福祉用車両ではあるが個性あるコンパクトカーというイメージだ。
