ポルシェらしさの原型がこの車に。
フォルクスワーゲン・ビートルの設計者が関わっているからだろう。ポルシェ356はビートルとよく似ている。ビートルを平べったくスマートにし、二人乗りにするとこの形になる。
ポルシェ356は、しなやかな曲線のボディ、グラマラスなボディが印象的だが、これ以降のすべてのポルシェ車は、このポルシェ356の持つデザインコンセプトが受け継がれている。
ポルシェの製造する車には、どの車にも一目でわかるポルシェらしさがあるが、そのポルシェらしさの原型が356なのである。


そしてこの車は、戦後の小型スポーツカーの指標的存在ともなった。第二次大戦後、世界中で数多くの小型スポーツカーが開発、製造されたが、どの車もこのポルシェ356を目指したということだ。ポルシェ356は、デビュー当初から強烈な印象を人々に与えた車なのである。
スポーツカーとしてのポルシェ356。
そもそもスポーツカーとは何か。スポーツカーという車の分類は、自動車が誕生した20世紀初頭からあったようだが、スポーツという言葉が示すように、自動車レースと関連があった。実際に当初はレース用の車をスポーツカーと言っていたようである。
次第に自動車の性能が上がってくると、レース用にはより性能を高めた車が使われるようになり、レーシングカーと公道を走る車との違いが明確となった。そこで、公道で走りを楽しむことができ、レースにも使える量産車をスポーツカーと言うようになったのである。
第二次大戦が終わり平和な時代になると、自動車レースに対する一般の関心が高まり、戦争で中止されていたレースも各地で再開されるようになる。スポーツカーとして戦後すぐに登場したポルシェ356もヨーロッパの数々のレースに出場し、入賞を果たしている。
このページの最初に掲げたポルシェ356は、Rallye International des Alpesという名称のアルペンラリー出場車である。それは、オーストリア、ドイツ、イタリア、スイスの山道を走り抜け、タイムを競うというもので、1953年にはポルシェ356が総合優勝している。
当時の記録映画だ。雪の積もる山道を跳ばす車たちが映っている。ポルシェ356も何台か走っているのがわかる。