ランチア アウレリア B24

経済復興もこれからという時の高級車だった。

アウレリアB24が製造、販売された当時、イタリアは、戦争の影響もあり決して豊かな国ではなかった。1950年代の中盤以降から1960年代にかけてイタリアは経済復興を果たし、奇跡の経済と呼ばれるようになるのだが、その奇跡の経済もまだ堵についたばかりであった。

ゆえに、アウレリアB24のような高級車は、お金持ちかランチア車のファンにしか売ることはできないと思うのだが、ランチアは240台製造して売り出すのだから徹底している。高級車メーカーとしては、国の状況はどうあれランチアらしい車の製造、販売はどうしても行わねばならない、ということだったのだろう。

その頃の日本はと言うと、外車の乗用車が社用やタクシーなどに使われるだけで、街を走るのはもっぱらバスやトラック、オート三輪だったものだ。その時代にランチアは、こんなオープンタイプの特別な乗用車を製造し、売っていたのである。

アウレリアB24が登場する映画「Il Sorpasso」
1962年のイタリア映画「Il Sorpasso(邦題 追い越し野郎)」の予告編である。主人公の乗ったアウレリアB24がローマの街を走りまくる様子が出てくる。この映画は、経済復興の中で変わりつつあったイタリアを描いた映画として人気が高く、イタリアでは今もファンが多い。高級車アウレリアB24を気軽に乗り回す人物が登場するところからも、今は昔のような悠長な時代ではなくなったと訴えているのだろう。

今も高値で取引されている。

アウレリアB24スパイダーが登場してからもう70年ほど経つが、この車の美しさは今も世界の自動車ファンを唸らせている。240台製造されただけであるので希少さも加わるからなのだろう。オークションに度々出品され高値で取引されている。

2014年、修復済みの1955年製B24スパイダーには181万5千ドルの値がついた。今の価値で約241万ドル、日本円で3億7千6百万円だ。また、2023年には倉庫で保管されていた1955年製B24スパイダーが54万ユーロで落札されている。日本円で8千7百万円である。安いと思うなかれこちらは修復前の車である。修復済みならやはり数億円だろう。

ランチア アウレリアB24、この車はやはり、いつの時代も必ず存在する「車のためなら金に糸目はつけない」というファンのための特別仕様車なのである。

アウレリアB24走行動画
美しい南ヨーロッパの景色の中を走る動画である。心地よいエンジン音を響かせながら走るアウレリアB2は、やはり絵になる車である。