いすゞ エルフ

キャブオーバーのディーゼルが人気に。

1930年代〜50年代まで日本の小型貨物自動車と言えば三輪自動車、オート三輪であった。しかし、1950年代の終わり頃になると、道路事情が良くなり、四輪トラックの価格がオート三輪に近づいたこともあって四輪トラックが配送の主役となってきていた。

そんな時代にエルフは登場する。発売当初は1500ccのガソリンエンジンのみであったが、翌年には2000ccのディーゼルエンジン搭載車を投入。人気に火がつく。2000ccの強力エンジン、しかもディーゼルであるため燃料費も安く済むということで、トラック購入を検討している会社や個人が飛びついたのである。

また、エルフはキャブオーバートラックであった。キャブオーバーとは、それまでのボンネット型とは異なり、エンジンをキャビンつまり運転席の下に置いたタイプのトラックである。その分荷台が広く取れ、小型トラックの割には荷物も多く積める。

しかも、エルフは前面がスッキリしており、フロントウインドウが大きく取られている。これは見晴らしがよく、運転しやすいということも意味している。エンジンや積載量もさることながら、こうした運転のしやすさ、居住性なども先発のトラックとは一線を画していたのである。

いすゞエルフ初代
いすゞ エルフ初代の実車
ベーシックなトラックタイプの初代エルフである。スッキリとしたデザインでフロントガラスは広く、運転がしやすそうだ。運転席のドアが前開きなのも興味深い。写真は2007年の東京モーターショーで展示されていた車のようだ。
Ypy31, Public domain, via Wikimedia Commons】

そして、いすゞエルフは、ディーゼルエンジン車を投入した昭和35年(1960年)にはこのクラスのトラックの販売台数のトップへと躍り出るのである。

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ビン類輸送車としてのいすゞエルフ。