ボルクヴァルト イザベラ

イザベラという名前の意味とは。

車の名前である「イザベラ」も、ユーザーの抱くこの車のイメージに大いに貢献したのではないだろうか。イザベラとは欧米の一般的な女性名である。英語読みをすれば、イザベラはエリザベスに対応する。

エリザベスと言えば日本人がまず思い浮かべるのはイギリスの前国王エリザベス女王である。最近亡くなったあの女王だが、イザベラが登場した2年前の1952年に若き女王として即位している。ボルクヴァルトは、その名を使ったのだろうか。しかし、ドイツのメーカーがイギリス女王の名前を使うとは考えにくい。

古い建物の前に停まるイザベラ
その名に恥じない車だ!
落ち着いた色合いのイザベラセダン。古風な建物ともしっくり調和している。イザベラ(エリザベス)の名に恥じないイメージを持った車でもある。
Lothar Spurzem, CC BY-SA 2.0 DE, via Wikimedia Commons】

イザベラという名前は、もともとこの車の開発コードでもあり、カール・FW・ボルクヴァルトが思いついたとされている。その彼の奥さんの名前が奇しくもエリザベスだそうで、奥さんの名前を付けたのだろうか。

それもありそうだが、ボルクヴァルト最初の乗用車の名前ゴリアテが聖書の登場人物から取られていたように、やはりこの名前も聖書から来ているのではないだろうか。

聖書に登場するエリザベスと言えば、バプテストのヨハネの母エリサベツである。ヨハネを身ごもった時、キリストの母であるマリアの訪問を受け喜んだという記述がある。こうした祝福された女性の名前を付けることで、ボルクヴァルトは、新たな美しい乗用車のヒットを願ったのではないだろうか。

最後の花道となったイザベラ。

名前にどんな由来があるか明確にはわからないが、この車ボルクヴァルト イザベラはユーザーに大いに受け入れられた。最終的に20万台以上のイザベラが製造され出荷されたのである。これは1950年代の車としては大ヒットであった。

グランプリのリボンが付けられたイザベラ
グランプリに輝いたイザベラ
1957年7月にオランダで撮影。イザベラがKNAC(オランダ王立自動車クラブ)のコンテストでグランプリに輝いた時の写真である。イザベラは、ヨーロッパではヒット車であったことがわかる。よく見ると、プードルらしい犬が一緒に喜んでいるが、誰の犬だろうか。
Herbert Behrens / Anefo, CC0, via Wikimedia Commons】

しかし、ヒットはしたもののイザベラには不幸が待っていた。1950年代半ば以降は販売不振が続き、1961年には自動車メーカーボルクヴァルト自体が経営破綻してしまったのだ。つまり、最も売れたこの美しい車イザベラが、自動車メーカーボルクヴァルトの最後の花道を飾ることにもなったのである。

イザベラクーペの動画
車の外観やインテリア、走る様子などを撮影した動画。当時の宣伝フィルムも入っている。