ボルクヴァルト イザベラ

ボルクヴァルトの中では最もヒットしたイザベラ。

さて、イザベラであるが、ボルクヴァルトの戦後二番目の乗用車として1954年に登場した車だ。ボルクヴァルトの製造した自動車の中では最も売れた車であった。当時、ドイツでよく売れていた中型車と言えばオペルとフォードだったが、イザベラは、同じクラスのオペル車やフォード車よりも価格は高く設定されていたがヒットしたのである。

やはり、このイザベラの洗練されたスタイルが良かったのではないだろうか。50年代の車は当時流行していたアメリカ車のデザインをそのまま取り入れたものが多かったが、ドイツの人々にはヨーロッパらしさを感じさせる美しい車が求められていたのだ。そうなると、少し値は張ってもイザベラをということになるのである。

実際この車のデザインは、ボルクヴァルトの戦後初の乗用車ハンザ1500や1800とは大きく異なるデザインとなっていた。ハンザ1500、1800は、戦後に登場した車によく見られるスタイルで、いわゆるポンツーンタイプの丸みを帯びたボディが特徴である。

ハンザ1800
ハンザ1800
イザベラが登場する前の1952年から54年にかけて製造されていたボルクヴァルトの乗用車。丸みを帯びたスタイルでフロントウィンドウも中央にラインが入っている。40年代の乗用車によく見られた形である。
Quelle: SpurzemFotograf: Lothar Spurzem, CC BY-SA 2.0 DE, via Wikimedia Commons】

しかし、イザベラはポンツーンタイプの先をゆくスマートさが新しかった。デザインは、ボルクヴァルト創業者のカール・FW・ボルクヴァルトが自ら行っている。もともとエンジニアでありデザイナーでもあった彼は、アメリカ車の良いところを取り入れながらもヨーロッパ車としての品格を持った乗用車としてこのボルクヴァルト イザベラをデザインしたのである。

2台のイザベラが並んでいる
イザベラのワゴンとセダン
スマートなスタイルでフロントウィンドウも曲線を帯びた1枚ガラス。ハンザ1800と比べるとデザインの新しさがわかる。2台並んでいるが、右はセダンで左はステーションワゴンである。
Lothar Spurzem, CC BY-SA 2.0 DE, via Wikimedia Commons】

次ページ
イザベラという名前の意味とは。