ボルクヴァルト イザベラ

ボルクヴァルトとはどんなメーカー?

ドイツの自動車メーカーボルクヴァルトとは、あまり聞かない名前ではないだろうか。ボルクヴァルトは、ドイツのエンジニアでありデザイナーでもあったカール・FW・ボルクヴァルトが1920年代に創業したメーカーである。

ボルクヴァルトの自動車の製造は、1924年の小型三輪トラックからだ。バイクの後ろに荷台を付けたようなシンプルな三輪自動車である。当時のドイツは第一次大戦後のインフレから抜け出そうとしていた時であり、価格が安くて便利に使えるということで商店の配達や運輸会社、郵便などの配送に活用されたようだ。

ボルクヴァルトの歴史
ボルクヴァルトの歴史を語る動画。三輪車に始まる自動車製造の歴史を50秒で振り返る。ボルクヴァルトは1960年代に倒産したが、2015年のジュネーブ国際自動車ショーで復活することが報道された。その時の映像のようである。

そして1930年代になると他の自動車メーカーを合併、吸収し、1931年には最初の乗用車を製造した。低価格の小型乗用車、ゴリアテ パイオニアである。しかも三輪の乗用車だ。この車、ボルクヴァルト傘下の三輪トラックメーカーであるゴリアテが製造したのでこの名が付いている。

ゴリアテという名前の意味がまた面白い。ゴリアテとは聖書の登場人物で、青年ダビデに倒される勇者。身長2.7mで手の指が6本あるという大男だ。小型自動車にしては勇ましい名前と言えるが、巨人のように力強いぞという意味を持たせたかったのか。昔のオロナミンCの宣伝よろしく「ゴリアテは小さな巨人」なのだろう。

三輪乗用車のゴリアテ
三輪乗用車ゴリアテ パイオニア
ボルクヴァルトが1931年に初めて製造した乗用車である。三輪自動車でおもちゃのようだが、名前はゴリアテ。この車、「小さな巨人」なのである。
Lothar Spurzem, CC BY-SA 2.0 DE, via Wikimedia Commons】

創業者のFW・ボルクヴァルトは、市場や社会の動きを感じて機敏に商売できる人間だったようだ。彼の会社ボルクヴァルトは1930年代の終わりにはトラックや大型乗用車を生産するドイツでも指折りのメーカーに成長するのである。

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ボルクヴァルトの中では最もヒットしたイザベラ。