オースチン FX4

辻馬車から始まったイギリスのタクシー。

イギリスのタクシーの原型はハックニーキャリッジと言われている。これは、道端や決められた場所で客を待つ小型の馬車のことで、客が乗ると目的地まで運んで運賃を請求するというものだった。まさしく現代のタクシーそのものである。

ちなみにハックニーキャリッジは、日本語で辻馬車と訳されている。江戸時代の町人が使った籠を辻駕籠と言うが、そこから来ているようだ。

ロンドンの辻馬車
ロンドンの辻馬車
1877年の写真である。馬車の後ろには認可のプレートも付けられている。
John Thomson (1837-1921), Public domain, via Wikimedia Commons】

ハックニーキャリッジに関しては17世紀には法律ができ、政府により認可されて営業するものとなった。現代でもハックニーキャリッジとはイギリスにおけるタクシーの正式名称でもある。由緒正しい公共交通機関なのだ。

さて、このハックニーキャリッジ―辻馬車も、20世紀を迎えると馬車ではなく自動車により営業されるようになる。認可を受けての営業であることから、使われる車両にも規格が制定され、自動車メーカーや車体製造メーカーなどにより専用車が生産されるようになる。

Punchに掲載された漫画
馬車に別れを告げる
1907年に発行されたイギリスの雑誌「Punch」に掲載された漫画である。主人公がお世話になった辻馬車に別れを告げている。この当時、馬車は自動車のタクシーに取って代わられつつあった。「もうあなたの役目は終わったんだよ」というわけである。
Leonard Raven-Hill, Public domain, via Wikimedia Commons】

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1930年代から存在したタクシー専
用車。