そして、4輪のスポーツカーが登場した。
FMRがKR200に続くマイクロカーとして1958年に登場させたのがTG500である。二人乗りの座席に航空機のようなキャノピーを付けたスタイルはそのままだったが、4つの車輪が付いていた。安定性をより高めたのである。また、エンジンは500ccの空冷エンジンで後輪の上に搭載され、重量は390kg。軽量で安定性の高いボディに500ccのエンジンであるから結構パワフルである。
3輪時代のKR175やKR200は、バイクにボディを付けたというイメージであった。あくまでもマイクロカーだったのである。ところが、TG500は、サイズこそマイクロだったが、スポーツカーであった。時速は126キロ、静止状態から28秒で時速97キロという記録を持っており、当時の小型のスポーツカー並みの性能だった。

1976年に撮影されたTG500
ベルリンで撮影された写真である。発売されてから20年近く経っているが、まだしっかりと活躍していたのである。
【Godwin T. Petermann, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
ベルリンで撮影された写真である。発売されてから20年近く経っているが、まだしっかりと活躍していたのである。
【Godwin T. Petermann, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】

レースに参加するTG500
オランダのザントフォールト・サーキットでのレースの様子。1959年撮影。TG500の2台後ろにはルノー・ドーフィンが見える。個性派小型車のレースなのだろうか。
【Harry Pot / Anefo, CC0, via Wikimedia Commons】
オランダのザントフォールト・サーキットでのレースの様子。1959年撮影。TG500の2台後ろにはルノー・ドーフィンが見える。個性派小型車のレースなのだろうか。
【Harry Pot / Anefo, CC0, via Wikimedia Commons】
もともとKR175は、低価格で移動手段としての自動車が手に入るというニーズに応えていた車である。つまりあくまでもマイクロカーであり、簡易型の車であったのだ。ところがTG500になると、個人用の小型スポーツカーというニーズにも応えるようになっていた。普通の移動用の自動車の他に趣味の車として小さなスポーツカーを持とうという車大好き人間には大いにウケたであろう。
