トポリーノと呼ばれた初代500。
フィアット500と言えばよく取り上げられるのが丸くて小さなあの車、アニメのルパン三世にも登場する車だ。それは、チンクェチェントという愛称でも知られ、1957年に登場した2代目のフィアット500である。2代目ではあるが、初代500とは全く異なり、新規に設計開発された車でもある。
今回取り上げるのはその2代目ではなく、初代のフィアット500である。開発されたのは戦前で、1936年だ。最初は2人乗りの小型車であり、デザインも1930年代流行の流線型スタイルを取り入れている。愛称はトポリーノ。ハツカネズミという意味があるが、確かに見た目はネズミである。小さな車体で街をチョロチョロ走り回る姿はネズミを連想させる。
しかもこの愛称は、ウォルト・ディズニーの“ミッキーマウス”から来ているらしい。イタリアでは確かにミッキーのことをトポリーノと言う。ミッキーマウスは1928年デビューであり、フィアット500が登場した1930年代中盤にはイタリアでも大人気だったようだ。

縦長のフロントグリルにライトが2つのかわいいヤツ。トポリーノの愛称の通り、確かにミッキーマウスのイメージである。
【Supermac1961 from CHAFFORD HUNDRED, England, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

1946年にイタリアのナポリで撮られた写真。子どもたちは、このかわいい車が大好きなのである。トポリーノの小ささもよくわかる写真だ。
【Federico Patellani, Public domain, via Wikimedia Commons】
形は小さいもののフィアット500には当時の新しい技術が多く取り入れられていた。車体の流線型もその一つだが、排気量570ccの水冷エンジンに油圧ブレーキ、前輪の独立懸架など上のクラスの乗用車に匹敵するスペックを持っていたのである。それでいて、価格設定も普通の乗用車より安くなっていたため、フィアット500は大ヒットした。
戦前に登場しヒットしたこの車の人気は戦後になっても衰えず、500AからB、Cとマイナーチェンジされ、結局1955年まで製造が続けられた。まさにこの当時のイタリアの国民車ともなったのである。1953年公開の映画「ローマの休日」では、当時のローマ市街の状況が出てくるが、フィアット500が街中を走り回っているのを見ることができる。
映画「ローマの休日」の一部を抜粋した動画。オードリー・ヘプバーン演じる王女のスクープを狙うカメラマンが、スクーターのベスパで走る王女を追いかける場面が入っている。カメラマンの乗る車がフィアット500である。その車以外にもたくさんのフィアット500がローマの街を走り回っているのがわかる。