GMの高級車ブランド、キャデラック。
さて、この車エルドラドを生み出したキャデラックであるが、どんなメーカーなのだろうか。キャデラックは、1899年に設立されたアメリカのメーカーだが、早くも1909年にはGM(ゼネラル・モーターズ)の傘下となり、それ以降GMの高級車ブランドとなった。つまり、キャデラックとはメーカー名というより、ブランド名なのである。
キャデラックが高級車として認知されてきたのは、やはりその品質の高さや先進技術を生かした車作りがあったからに他ならない。
世界で最初に実用的なセルモーターを搭載し、エンジンスタートをしやすくしたのはキャデラックであり、V8やV16などの高出力エンジンやパワステ、カーエアコンなどもいち早く採用してきた。やはりキャデラックは、誰もが納得するような優れた車であり高級車なのである。


1921年のサタデー・イブニング・ポストに掲載された広告。低重心を実現したことにより、安定性や操縦性能が良くなったことを訴えている。グラフィックデザインもスマートで高級感がある。
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エルドラドは、豊かな国アメリカの象徴だった。
そのキャデラックが、第二次世界大戦後のアメリカで、高級車の決定版とも言える車を世に出そうという意気込みで登場させたのが、キャデラック エルドラドである。
エルドラドが登場した1950年代初期は、戦後の混乱も収まってきていた時代である。しかも、アメリカは豊かな国であった。当時のヨーロッパ各国は、1945年まで続いた第二次世界大戦によって主要都市が戦火を受け、まだ復興途上にあった。また、日本を見れば、焼け野原の中からようやく立ち上がってきた頃でもある。
アメリカの町だけが、世界大戦の戦火をほとんど受けておらず、国民も豊かであった。この時代、一般の家庭にも最新の車や電化製品があるのはアメリカぐらいだったのである。
ゆえに高級車も大いに売れたに違いない。そんな時代にキャデラックは、豊かなアメリカを象徴するような車を出したかったのであろう。そこで黄金郷エルドラドの登場となったわけである。

ニュー・ハンプシャー州キーンのメインストリートを撮影した1950年代の写真。商店街の駐車場に多くの自家用車が駐車している。キーンはそれほど大都市ではないが、この頃すでに車社会であったことがわかる。しかも、写真は白黒ではなくカラーだ。アメリカは豊かだったのである。
【Keene Public Library and the Historical Society of Cheshire County from USA, No restrictions, via Wikimedia Commons】
