「異次元の自動車」と言われたDS19。
当時はまだ少なかった前輪駆動を採用し、空気抵抗の少ない流線型のデザインと油圧を使ったサスペンション・システムを搭載したこの車は、モーターショーで発表されるやいなや「異次元の自動車」といううわさが広まった。1955年という戦後10年しか経っていないこの時期に、とてつもなく未来的な車が現れたのだから人々は度肝を抜かれたことだろう。モーターショーで発表したその日になんと1万2千件のオーダーが入ったそうである。

DS19
流線型でノーズが長く、4ドア。止まっている際には車高が下がるサスペンションも話題となった。
流線型でノーズが長く、4ドア。止まっている際には車高が下がるサスペンションも話題となった。

DS19のリアビュー
ブレーキランプがバンパに−組み込まれ、方向指示器はリアウインドウの隅にある。独特なデザインだ。
【Klaus Nahr, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】
ブレーキランプがバンパに−組み込まれ、方向指示器はリアウインドウの隅にある。独特なデザインだ。
【Klaus Nahr, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】
シトロエンという企業は新しい技術を積極的に取り入れる自動車メーカーでもあった。戦前の1934年に、前輪駆動でボディとシャーシが一体になったモノコック構造のトラクシオン・アバンを製造、販売し好評を得ている。

トラクシオン・アバン
1934年に製造されたシトロエンの前輪駆動車。モノコック構造の自動車の先駆けでもある。
【Lars-Göran Lindgren Sweden, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
1934年に製造されたシトロエンの前輪駆動車。モノコック構造の自動車の先駆けでもある。
【Lars-Göran Lindgren Sweden, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
そして、戦後すぐに登場したのはあの名車2CVだ。1948年に登場した2CVは、見た目は古いが、独自の技術が多く盛り込まれていて、軽量で運転しやすくフランスの国民車とも呼ばれる車となった。DSは、まさにこれらシトロエン車の延長線上に存在するのである。

モーターショーでのDSの展示
1963年のアムステルダム国際モーターショーでの一コマ。DSが彫刻として発表された。この奇抜な展示こそ、シトロエンの真骨頂でもある。
【Harry Pot / Anefo, CC0, via Wikimedia Commons】
1963年のアムステルダム国際モーターショーでの一コマ。DSが彫刻として発表された。この奇抜な展示こそ、シトロエンの真骨頂でもある。
【Harry Pot / Anefo, CC0, via Wikimedia Commons】
