新時代の流行を取り入れた。
ドーフィンは、開発にほぼ5年をかけ、当時のルノーが持つ先端技術を注ぎ込んだ車となった。4CVの動力システムを踏襲しながら、よりパワフルで経済的な車へとグレードアップしたのである。
しかもスタイルは、1950年代の車によく見られたポンツーンスタイルだ。それは、前後のフェンダーとボンネットやトランクが一体になったスマートな形で、当時流行のスタイルであった。しかも、車内空間が以前の車より広いというメリットもあった。
戦後すぐに登場した4CVは、ヒットし、多くのユーザーに親しまれていた。だが、発売後10年近く経つと、古臭さが目立つようになってきていた。しかも、競合メーカーからは、スマートな新しい車が続々と登場してきている。そんな状況を考慮し、ルノーは、新時代の流行を取り入れたスタイルで勝負したのである。

街角のルノー ドーフィン
1958年に撮影されたドーフィンの写真。モノクロであるため色は不明だが、そのスタイルのスマートさがよくわかる。当時の宣伝写真かもしれない。
【Clyde Burdette, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
1958年に撮影されたドーフィンの写真。モノクロであるため色は不明だが、そのスタイルのスマートさがよくわかる。当時の宣伝写真かもしれない。
【Clyde Burdette, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
このページの最初に掲げたドーフィンは、よく見るとフロントにラジエターグリルがある。エンジンは後ろにあるため、ここにラジエターグリルは不要なのだが・・・。実は、このグリルはダミー、つまり飾りだそうである。全てのドーフィンに同じダミーが付けられていたわけではないが、こんなバージョンも販売されていたのだ。
当時の多くの新型車は前にエンジンを搭載するFR車であり、車のフロントに目立つラジエターグリルが付いていた。そして、それが車のデザインポイントにもなっていた。そこでルノーも、新型車ドーフィンの新しさ、かっこよさを強調するため、ダミーのグリルを付けるという、いわば涙ぐましい努力までしていたのである。

ドーフィンとその時代の車たち
1965年にオランダで撮影された写真。イースターのイベントで交通規制が行われた時の様子らしい。ドーフィンの右隣はフォルクスワーゲンのタイプ3、後ろはフォードのタウヌスである。どの車もポンツーンタイプである。
【Eric Koch for Anefo, CC0, via Wikimedia Commons】
1965年にオランダで撮影された写真。イースターのイベントで交通規制が行われた時の様子らしい。ドーフィンの右隣はフォルクスワーゲンのタイプ3、後ろはフォードのタウヌスである。どの車もポンツーンタイプである。
【Eric Koch for Anefo, CC0, via Wikimedia Commons】