SUVでもこの車は売れなかった。なぜ?
ところが、この車は思うようには売れなかった。車に対する意識が現代とは違っていたからである。車といえば、スマートで、エレガントで、スピードが早く、というのが当時の人々の車に対するイメージであった。
しかし、コロラールは不整地ではよく走るとしても、普通の道路ではやはりパワー不足が目立ってしまった。前から見れば都会で走っている4CVに似てはいても、ボディはワゴンタイプであり田舎臭さが抜けない。
いくら頑丈で、不整地を力強く走ったとしても、商売や仕事で使うならばよいが、家の車として購入するのはどうかということになったのだろう。
この時代、家族を乗せてドライブといっても、せいぜいピクニック程度だったろう。キャンプとかアウトドアなんて意識はない。そもそも仕事でもないのに車で山や森に行こうなど思わなかったのではないだろうか。
テントを積んで山奥へ分け入り、自然を満喫するといったアウトドアレジャーが普通になった現代だからこそSUVは人気を得たのである。

消防車両として使われたコロラール
フランス東部の街コルマールで見られたものである。やはりこの車は、こうした仕事での使用が主だったのだろう。消防士のオープンハウスでのルノーコロラールとの解説があり、現役で使われている車かどうかは不明である。
【Gzen92, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
フランス東部の街コルマールで見られたものである。やはりこの車は、こうした仕事での使用が主だったのだろう。消防士のオープンハウスでのルノーコロラールとの解説があり、現役で使われている車かどうかは不明である。
【Gzen92, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】
では、この車は現代では受け入れられるのだろうか。現代のSUVは街乗りが基本であるからやはり難しいかもしれない。しかし、現代のSUVブームの萌芽とも言える1980年代のクロスカントリー車ブームの時代ならどうか。
それは、高い走破性能を持ちながら高速での安定性や居住性を高めた四輪駆動車がブームとなった時代である。
スズキがジムニーのデザインを一新し、三菱がパジェロをデビューさせ、トヨタランドクルーザーの60系や70系が人気となった頃だ。その時代なら、コロラールも人々に受け入れられたのではないだろうか。
それを考えると、この車、ルノーコロラールの登場は30年ほど早すぎたと言えるだろう。