メルセデスベンツ 180

大きく変わった、日本人とベンツの関係。

さて、ここで少し日本人とベンツという車の関係について考えてみたい。日本人にとってベンツほど昔と今とで大きくイメージが変わった車はないだろう。

その昔、ベンツはよっぽどのお金持ちか会社の社長、政治家といった偉い人の乗る車というイメージだった。その手の職業の人々が乗る車としても知られ、黒塗りのベンツには近づくな、なんてよく言われたものである。

ベンツといえば日本だけでなく世界的にも高級車として知られる車であったことは確かである。第二次世界大戦中、ドイツの首相アドルフ・ヒトラーがオープンカーでパレードをする映像があるが、そこで使われていたのはメルセデスベンツ770である。その影響かどうかは定かではないが、ベンツの大型車は今でも各国で政府高官の乗る車としてよく使われている。

ベンツ770の写真
ベンツ770
1938年に撮影された写真。ベンツ770のガブリオレに乗るアドルフ・ヒトラーを民衆が歓迎している。この車は、当時の枢軸国の要人たちによく使われていた。
Bundesarchiv, Bild 183-H12705 / CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0 DE, via Wikimedia Commons】
ベンツ300dの写真
ベンツ300d
ベンツ180が製造されていた当時の大型モデル。現在のSクラスに相当する高級車で、ホイールベースの長いリムジンタイプでもある。
Berthold Werner, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】

ところが、偉い人が愛用する車であることは今でも変わらないのだが、近頃ベンツは極めて普通の、よく見かける外車ともなった。豪勢なお屋敷ではなく、普通の住宅の駐車場にベンツが2台駐車しているなんて景色もよく見られる。

事実2022年の統計を見ても、日本の輸入外車の新規登録台数で最も多いのがベンツであり、2位のフォルクスワーゲンより1万5千台も多い。

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今に生きるベンツ180のコンセプト。