メルセデスベンツ 180

安全優先の車づくりが、ここから始まった。

それは、衝突安全ボディの実現である。モノコック構造の採用によって、衝突時に衝撃をボディが吸収して人間を保護できるようにしたのである。これは画期的なことでもあった。

それまでの自動車作りは、「より早い」、「よりパワフルな」、「より快適な」を目指したのだが、この車以降、「より安全な」が重要なキーワードとして加わるようになる。そして、こうした安全優先の車づくりはその後のベンツの基本方針となってゆく。

コンパクトで高級感もあり、しかも流行のデザインで安全性も考慮している。メルセデスベンツ180は非常に魅力的な車となったわけだが、当時は爆発的に売れたわけではなかった。

特にベンツのコンパクトモデルは、1962年にこの車の製造が終わってからは80年代になるまで登場していない。それを考えると、この車のコンセプトは少し早かったと言えるのかもしれない。

工場のベンツ組立ライン
メルセデスベンツ180の組立ライン
ジンデルフィンゲン工場の組立ラインでベンツ180が生産されている。モノコック構造により大量生産ができ、車の安全性も向上した。1956年撮影。
Bundesarchiv, B 145 Bild-F003562-0006 / Unterberg, Rolf / CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0 DE, via Wikimedia Commons】

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大きく変わった、日本人とベンツとの関係。