アウトウニオン 1000SP

戦後初のヒット車は、リッターカー。

このアウトウニオンは、得意分野を持つ4社合併のおかげで、数々のヒット車やレースカーを生み出した。そして、1935年にはドイツの乗用車市場の半数を占めるなど、大いに業績を伸ばすことになった。

しかし、1939年に始まった第二次世界大戦によりこの会社の躍進もストップしてしまう。

1945年、第二次大戦は終結するが、ドイツは敗戦国となり混乱が続いた。そのためアウトウニオンとして自動車の生産が本格的に再開されたのは1950年代である。そのアウトウニオンが送り出した戦後初のヒット車は、アウトウニオン1000であった。

アウトウニオン1000は、アウトウニオンが戦前から培っていたテクノロジーをベースに作られた車であり、1958年から1963年まで製造されていた小型ファミリーカーだ。

アウトウニオン1000Sクーペ
アウトウニオン1000Sクーペ
1958年から63年にかけて製造、販売されていた。上はドイツのアウディミュージアムが所蔵している1台。赤と白のツートンがキュートである。
Lothar Spurzem, CC BY-SA 2.0 DE, via Wikimedia Commons】

曲線を生かしたデザインで大きなラジエターグリルとヘッドランプによる愛嬌のある顔が特徴だった。そしてラジエターグリルの中央にはあの4つの輪が付いていた。

1000という名前からわかるように、エンジンは981ccであり、しかも当時はまだ珍しいFF車、前輪駆動の小型ファミリーカーだった。つまり、現在で言うところのリッターカーである。

曲線を生かしたデザインでかわいいイメージなのも納得である。リッターカーとは日本語の造語で1000ccクラスの小型車を指す言葉として流行したが、話題となったのは1970年代からだ。しかし、ドイツには1950年代からこんな車があったのである。

1000Sが写っている昔の写真
イースターで見られた1000S
イースターのお祭りに集まる車を警察が誘導している。車列の先頭は1000Sだ。この時期1000Sは販売が終わっていたのだが、まだキレイである。愛されていた車だったのだ。1000Sの後ろにはフォルクスワーゲンタイプ2がいる。1965年の4月に撮影。
Eric Koch for Anefo, CC0, via Wikimedia Commons】

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1000とは見た目が全く違う、1000SP。