アウトウニオン 1000SP

4つの輪のエンブレム。その由来は。

さて、似ていると言えば、この車のトランクのドアに付けられているエンブレムにも注目である。4つの輪が繋がったエンブレム、これはドイツのアウディに似ている。似ているというより、アウディそのものである。では、アウトウニオンとアウディにはどんな関係があるのだろうか。

アウトウニオンとは日本語に訳せば“自動車連合”だ。ドイツの4つの自動車メーカーが合併し、つまり連合して生まれた企業である。設立されたのは1932年だ。

1930年代の初めは、世界恐慌の影響でドイツの産業界は不況に陥り、自動車業界にはアメリカ資本の波が押し寄せてきていた。1931年にアメリカのフォードがドイツフォードを設立し、フォード車の現地生産を始めた。また同じ年、ドイツのメーカーだったオペルがアメリカのGM(ゼネラル・モーターズ)の子会社となった。

そんな状況の中で、ドイツ国内の自動車メーカーは危機感を持ったのだろう。ホルヒ、アウディ、ヴァンダラー、DKWの4社が合併し、アウトウニオン“自動車連合”を設立したのである。ロゴは、4社を意味する“フォーシルバーリングス”。これが4つの輪の由来であり、アウディは合併した4社の一つでもあったのだ。

アウトウニオンの金属製ロゴタイプ
アウトウニオンのロゴ
ラジエターグリルに付けられたロゴである。4つの輪にAUTO UNIONの名前も付けられている。
User:Jed, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】
1000SPのグリルに付けられているエンブレム
1000SPと4つの輪
2006年の旧車イベントで見られた1000SP。フロントのラジエターグリルに大きめのフォーシルバーリングスが付けられている。こうなると、もうアウディ車である。
Flominator, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】

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戦後初のヒット車は、リッターカー。