オチキス アンジュ

兵器メーカーが始めた自動車製造。

ここでオチキスについて紹介しよう。オチキスはアメリカ人のベンジャミン・ホチキスがフランスで1867年に創業した会社である。もともとは自動車メーカーではなく、兵器メーカーであった。大砲や機関銃、戦車を製造していたのである。最初は1870年の普仏戦争(フランスとプロイセン王国との戦争)でフランス軍の兵器を作ったというのだから歴史は古い。

それが、20世紀を迎えると自動車製造を開始する。最初はエンジンの製造から始めたようだが、オチキス車第一号は、1903年に登場した17馬力4気筒の車であった。

オチキスの古い広告
初期のオチキスの広告
自動車製造を始めて数年経った頃の広告。すでに高級車製造を意識しているようだ。
Conam.info, Public domain, via Wikimedia Commons】

オチキスとして自動車を次々と製造、販売したのは第一次世界大戦が終わってからで、1920年代なかばには自動車の新工場を建設し、ニューモデルを投入。オチキスは、高級車のブランドとして人々の認知を得るようになっていった。

アンジュをはじめオチキスの車には会社のロゴマークがエンブレムとして付けられている。それは、2本の大砲を交差させたデザインで、兵器製造会社としてのオチキスを表すものでもあった。

実際、自動車メーカーの中にはもともと兵器を製造していた会社がいくつか存在する。確かに内燃機関つまりエンジンの設計、製造は、火薬の爆発の圧力を利用する銃や大砲の設計、製造と共通する点がある。製品をいかに扱いやすい機構とするかというところも同じである。

大砲を交差させたエンブレム
オチキスのエンブレム
2本の大砲の砲身を交差させたデザインである。兵器製造メーカーとしての誇りが見られる。
michel coiffard from upaix 05300, france, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】
オチキスAM2
オチキスAM2
1930年製のオチキス車である。フロントグリルの真ん中に砲身交差のエンブレムがしっかり付けられている。
Myself (Adrian Pingstone)., Public domain, via Wikimedia Commons】

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