ビバスポールは、女性向けの車?
さて、本来自動車は男性が好むものである。この時代も当然そうなのだろうが、ビバスポールの広告には女性が登場する。ではこの車は女性をターゲットとしていたのだろうか。
1930年代にもなってくると、働く女性が増え、女性参政権の運動も盛んになった。何かに付けて女性の活躍が目立つようになってきていたのである。車の広告に女性が登場するのはそんな社会状況と無関係ではあるまい。確かに女性に乗って欲しいという思惑はルノーの方にもあったのかもしれない。
とは言うものの、自動車であるから日用品のように気軽に購入できるものではない。特にビバスポールは高級車である。それなりの値段はした。やはり話題作りとして、広告に女性を登場させたのだろう。
しかし、自動車ショーのコンパニオンのような添え物ではなく、活動的な女性のイメージでビバスポーツを語ろうとしたところは、現代の自動車のセールスプロモーションやCMにも繋がる新しさであると言えるのではないだろうか。
レトロモバイルで見られたビバスポール
パリのポルト・ド・ヴェルサイユで開催されたクラッシクカーイベント「レトロモバイル2020」で展示されたルノービバスポール。やはり美しい車だ。
パリのポルト・ド・ヴェルサイユで開催されたクラッシクカーイベント「レトロモバイル2020」で展示されたルノービバスポール。やはり美しい車だ。
しかし、この少し後、時代は男性中心の世界へ、そして重苦しい世界へと変わっていってしまう。1939年9月、ナチスドイツがポーランドへ侵攻し第二次世界大戦が勃発するのである。
ルノー ビバスポールは、そうした暗い時代を前に咲いた艶やかな花であったのかもしれない。一般大衆に、自分も高級車を運転できるという明るい希望を抱かせたのである。
