ルノー ビバスポール

1930年代という時代と自動車。

1930年代と言えば、大恐慌の嵐から始まり、第二次世界大戦の勃発で終わる時代。明るく、幸福な時代とは言い難かったが、大衆文化が一気に広がった時代でもある。

またそれは、一部の特権階級やお金持ちでなければ楽しめなかったものが、一般大衆でも楽しめるようになったということも意味している。

自動車も例外ではなかった。それまで大富豪の道楽であった自動車の運転を、普通の人でも楽しめるような社会状況になってきたということである。

パリの絵葉書
1930年代のパリの絵葉書
凱旋門と大通りの写真に色を付けた1930年代の絵葉書である。通りに馬車の姿はなく、さまざまな自動車が走っている。
Editor “Yvon”, Paris 15, Rue Martel, Public domain, via Wikimedia Commons】
当時の家庭で見られた自動車
1937年の夏の一日を家庭用映画カメラで撮影したもののである。登場する車はビバスポールと同時期に登場したビバグランスポールだ。

自動車を一般の人々の買える物にしたということでは、1908年に登場し、大量生産方式の導入で価格を下げたアメリカのフォードT型が有名だ。しかしそれは、単に買える価格の車が存在するということであり、欲しい車を選んで購入できるということではなかった。

もちろん、この時代、1930年代でも自動車は簡単に購入できる物ではなかったのは確かである。しかし、「とても持てるわけはない」ではなく。「いつかは自分も好きな車を」と思えるような時代になっていたのだ。

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庶民がドライブを楽しむために。