クライスラー タウン&カントリー

車には昔から木が使われていたが・・・。

車の材料に木材を使うということは昔からあった。自動車が社会に登場した頃は、エンジンやシャーシは金属だが人間が乗る部分、いわゆる上モノは木製が多かった。自動車自体が馬なし馬車と呼ばれ、馬車の発展形であり、馬車の客室を作る業者が自動車のキャビンも作っていたのだから当然の成り行きだったのである。

日本にも昔は一部が木製の自動車がたくさんあった。例えば昭和30年代のトラックは、シャーシの上に木製の荷台を付けていたし、ボンネットバスの床も木製で黒いワックスが塗られていたものだ。だから、木を使った自動車は少し古いというかオンボロというイメージもあった。いい車は、やっぱり鉄の荷台のトラックだし、樹脂製の床を貼ったバスだったのだ。

しかし、このタウン&カントリーは、お金持ち好みの高級車だ。高級車のインテリアには美しい木目を使ったものがあるが、それをエクステリアにも使っているのがこの車だ、と考えることができる。しかもプリント合板の木目ではなく、天然目の木目なのだから贅沢この上ない。当然値段も張る。大衆車の3倍くらいの価格がしたそうである。

家具でも木目のプリントがされたベニヤ合板より天然目を使い木目をそのまま出している方が高級である。「天然木でなければこの艶は出んな。」なんてお金をつぎ込んだ座卓を自慢する親父と同じで、高級が大好きなアメリカの富裕層にこの車はウケたのだろう。

斜め後ろから見た実車
天然木が使われている
タウン&カントリーの木製部分のアップである。フレームには北米原産のホワイトアッシュが、パネルにはマホガニーが使われた。
Damian Gadal, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】
1941年製の運転席まわり
運転席まわりの木材
これは、1941年製の初代タウン&カントリーセダンタイプだ。ドア全体が木製で、内部のインテリアも木目を生かしたものとなっている。これまた贅沢である。
Corvair Owner, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】

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アウトドアで贅沢するならこの車。