モーリス マイナー

戦争中から開発が始まった戦後のマイナー。

戦後型マイナーの開発が始まったのは、第二次大戦中の1941年のことだった。その頃、戦争はまだ終わる気配を見せておらず、イギリスは戦時体制にあった。したがって民間の自動車メーカーでの乗用車の生産は禁じられていた。

しかし、戦争はやがて終わるはずであり、終わり次第すぐに新しい車を売り出せるよう準備しておかなければならない。それがモーリス自動車の首脳陣の考えであった。そこで、新型車開発のプロジェクトを秘密裏にスタートさせるのである。

開発の目標は、庶民向けの経済的な小型車を作ることだった。それも、値段に見合った車ではなく、より高価な車と同じかそれ以上の車となることを目指していた。

戦争が終わって3年後の1948年、広い室内空間を持ち、乗り心地よく、ステアリング操作もしやすい小型車が出来上がる。これぞモーリスの戦後型という車、新モーリス マイナーが誕生するのである。

モーリス マイナーの看板の写真
モーリス マイナーの看板
当時の販売店の店頭に掲げられたものであろう。マイナーを宣伝する看板である。キャッチフレーズが泣かせる。世界で一番の小型車なのである。Biggest small car!というのが効いている。
Period Morris Minor advertising sign at The Ploughman, Werrington by Paul Bryan, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】

庶民に大いに愛されたモーリス マイナー。

モーリス マイナーは、この後、メーカーの合併や再編により製造メーカーは変わっていったが、1971年まで長い期間製造、販売され、100万台以上を売り上げた最初のイギリス車ともなった。庶民の車として大ヒットしたのである。

イギリスを代表する小型車と言えば、あの名車ミニがある。ミニは、1959年にモーリスから登場しヒットした車だ。実際に、モーリス マイナーの後継車でもあった。しかし、そのミニが発売されてから10年以上もマイナーは生産が続けられたのである。やはり、それだけ愛された車だったのだ。

3台のマイナーの写真
マイナー揃い踏み
左が1958年製、真ん中が1962年製のコンバーチブル、右が1969年製である。ほとんど変わっていない。やはりこのスタイルが愛されていたのである。
andreboeni, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】
チョルシーで撮られたマイナー バン
街で見かけたマイナー
マイナーのバンタイプである。それほど背は高くない普通のバンだ。イギリスのオックスフォードにある街チョールジーで撮影されたもの。マイナーはやはりイギリスの町並みにしっくりと合う車だ。
Morris Minor Van in Cholsey by Des Blenkinsopp, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons】

あるイギリスの自動車雑誌で、モーリス マイナーは「第二次世界大戦後、イギリスが再び道路を走るようになった主な方法である。」と論評された。戦後にイギリスの人々が乗るようになった最も一般的な車が、このマイナーというわけである。本当にイギリスらしいイギリス車は、ミニではなく、マイナーだと言う人も多いようだ。

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背の高いマイナー、一体何に使われた?