20年代に急成長した自動車メーカー、モーリス。
モーリス自動車とは、自転車製造業だったイギリス人ウィリアム・モーリスが1913年に創業した自動車メーカーである。このメーカー、その始まりは、エンジンをはじめとする自動車部品を他のメーカーから買い入れ、工場で組み立てて販売するというスタイルの会社であった。つまり、自社で最初から開発するのではなく、他のメーカーのいいとこ取りであったのだ。
しかし、そうしたスタイルの方が市場のニーズにも早く対応できるからなのだろう、モーリス自動車は、高い性能の車を低価格で売ることで評判となり、業績を伸ばしていった。1920年代の中頃までには他のメーカーを傘下とする大メーカーへと成長し、イギリス国内のシェアのほぼ半分を獲得するまでになるのである。
そして大メーカーとなるにつれ、モーリス自動車は、自社オリジナルの車の開発も行うようになる。モーリス マイナーもそうした車の一つである。
マイナーは、1948年に登場した車であるわけだが、実は、マイナーという名前の車は、その20年前の1928年にも存在している。それは、新設計のエンジンを搭載した小型車で、モーリスが小型車市場に参入し、1930年代の不況を乗り切るための切り札となった車でもあった。

1920年代のモーリス車
アイルランドのウォーターフォードにあった代理店の前に並ぶモーリス車。撮影されたのは1928年であり、この頃にはモーリスはすでにイギリス最大の自動車メーカーだった。
【National Library of Ireland on The Commons, No restrictions, via Wikimedia Commons】
アイルランドのウォーターフォードにあった代理店の前に並ぶモーリス車。撮影されたのは1928年であり、この頃にはモーリスはすでにイギリス最大の自動車メーカーだった。
【National Library of Ireland on The Commons, No restrictions, via Wikimedia Commons】

戦前のモーリス マイナー
1928年から1934年まで製造、販売され、コンパクトで低価格な小型車としてヒットした。写真は、1933年製の2ドアサルーンである。
【Steve Glover from Bolton, Lancs., England, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】
1928年から1934年まで製造、販売され、コンパクトで低価格な小型車としてヒットした。写真は、1933年製の2ドアサルーンである。
【Steve Glover from Bolton, Lancs., England, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】
そんな点でマイナーは、モーリスとしても思い入れのあった車だったのだろう。第二次大戦が終結し、戦後初の車として開発した新型車の名前にこの“マイナー”を復活させたのである。
