レイランド FK9

バスがベースである利点とは。

トラックを製造しているレイランドがバスをベースに消防車を製造したという点は、注目に値するところでもある。なぜか。もともとトラックに消防ポンプを搭載して運ぶというアイデアで作られている消防車は、オープンが当たり前であった。ゆえに、消防車で現場に向かう消防士は、吹きさらしの中で消防車の席に座ったり、立って掴まってたりして出動していた。夏は良いが冬は厳しい。冷たい雨が降ればなおさらである。しかも危険でもある。実際に突っ走る消防車から投げ出されて死亡した消防士もいたらしい。

消防士が火災現場で任務を全うするためには、こうした不快さや危険を回避しなければならないとレイランドは考えたのだろう。それで、乗客が乗るための車であるバスをベースとしたと考えられる。

バスがベースであるので、オープンではなくキャビンがあり、消防士はそこの座席に座って出動できる。実際にこのFK9には8名ほどが乗車できるようだ。しかも、バスがベースであるということは荷物を積むトラックよりも乗り心地もよいと思われる。車体のサスペンションも乗用を考えて作られているからだ。

車のデザインも消防車にしては美しい。ダンディなイメージさえある。キャビンの屋根が車体後部に向けて曲線を描いているところなどはまさに秀逸である。

横から見たレイランド FK9
横から見たレイランド FK9
屋根がカーブを描いており、その上に大きなハシゴが掛けられている。また、車のサイドにはホースの取り付け口がある。コンパクトで機能性が高そうである。
後ろから見たレイランド FK9
後ろから見たレイランド FK9
ハシゴには大きな車輪がついている。これは車から降ろしたハシゴ移動させるためだ。放水用のポンプも見える。
博物館にあるレイランドFK9
レイランドFK9の実車
イギリスのイプスウィッチ交通博物館に展示されているレイランドFK9消防車。レイランドカブとして紹介されている。この車は全体が赤で屋根とフェンダーが黒に塗られている。
kitmasterbloke, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons】

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各地で活躍したレイランドFK9。