Leyland FK9

出動せよ!ダンディーな消防車。
消防車である。色は赤ではなく黒だが、放水ポンプが搭載され、屋根には長いハシゴも乗っている。この車は、確かに消防車である。
これはイギリスのレイランド・モーターズが1939年に製造した消防自動車レイランド FK9だ。排気量3700ccのエンジンを搭載し、ポンプの放水能力は毎分3000リットル。屋根に載せられたハシゴは取り外しができ、大きな車輪がついているので建物の近くまで運んで使うこともできた。当時としては最新鋭の消防車でもあった。
消防車の歴史を考える。
消防車は、自動車の歴史の初期から活躍していた車種である。いや、自動車の歴史以前に発明され、改良され続けてきた車でもあるとも言えるだろう。
消防車の歴史は消防ポンプの歴史でもある。16世紀には既に蒸気機関の力で放水する消防ポンプが発明され、ファイアー・エンジンと呼ばれていたようである。こうした消防ポンプを火事の現場まで人力や馬車で運んでいって消火活動を行うというのが18世紀頃までの消火活動であった。次第に消防ポンプには改良が加えられ、少ない力で高圧の放水ができたり、人力だけではなく馬の力を使ってポンプを動かすことができるようになっていった。

アメリカで描かれた消防ポンプの歴史の絵。some early types of fire engines(いくつかの初期のタイプのファイアーエンジン)とタイトルが付けられている。さまざまな工夫がなされていたようである。
【Brooklyn (New York, N.Y.). Fire Dept, Public domain, via Wikimedia Commons】
19世紀になり蒸気機関車が発明されると、蒸気機関を使った蒸気消防車が登場する。蒸気の力で自力走行し、強力な放水ができる“消防車“となったのである。そして、蒸気消防車が消防自動車となるのに時間はかからなかった。20世紀初頭には、実用化されて間もないガソリンエンジン車に消防ポンプを搭載した消防自動車が登場するのである。
考えてみると、エンジン自動車で消防車を作るというのは画期的で、優れたアイデアでもある。ガソリンエンジンという強力な力でポンプと消防士を火災現場まで運び、その同じ強力な力を使って放水ポンプを駆動させるのだから、まさに一石二鳥なのである。
イギリスで1930年代に作られた記録映画の一部分である。消防設備の歴史が描かれている。最初に登場するのが昔の日本で使われていた手押しポンプであるのが面白い。最新の設備としてレイランドと思われる消防車も登場する。
