ジャガー SS100

低価格で高性能なSS100。ジャガー。

少しメーカーの話が長くなったが、こうしてオリジナルな自動車を開発、製造するようになったSSカーズが、新たな高性能車をユーザーに届けるという意気込みで1935年に登場させたのがジャガー SS100である。

当時の社会は世界恐慌の影響を受け、不況に喘いでいた。こんな時代の中で、購入しやすい価格であったSSカーズの車は、ある程度の人気を得ていた。しかし、デザインやスタイルは評価できるものの、搭載するエンジンは“物足りない”とか、“見掛け倒し”というのが一般の見方だったことも事実であった。

そこでSSカーズは、それまでのエンジンに改良を施し、より出力の出せるOHV(オーバーヘッドバルブ)エンジンを開発。そのOHVを搭載したジャガー SS100を売り出すのである。これにより、SSの車は見掛け倒しではなく、そのスタイルにふさわしい高性能車となり、大いに人気を得ることとなった。

しかも車の名前も「ジャガー」とし、その性能の高さや車の速さを強調したのである。また、ジャガーのボンネットマスコットが登場したのも、このSS100からである。車の性能向上に加え、車のイメージアップも果敢に行ったのがこの当時のSSカーズだったわけだ。

ジャガー SS100の実車
ジャガーSS100
2022年にイギリスのハンプトンコート宮殿で行われたクラシックカーイベント「コンクール・オブ・エレガンス」に出展されたSS100である。1939年製とのことなので、生産終了の少し前の車だ。それにしてもエレガンスである。
MrWalkr, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】

そして1939年から第二次世界大戦が始まり、1940年、ジャガーSS100の生産はストップする。大戦は、1945年に連合国側の勝利によって終わりを告げるが、ジャガーSS100の生産が再開されることはなかった。ゆえに生産台数は314台と少なく、今ではオークションで高値で取引される車となっている。

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ジャガーは、車の名前からメーカーの名前へ。