ゴリアテ GD750

クオリティの高い三輪トラックを。

ゴリアテの力強さはイメージだけではなかった。ゴリアテと競合する車に、同じドイツの自動車メーカーであるテンポが製造する三輪トラックがある。大きさもスタイルも似通っているのだが、大きな違いがあった。それは、テンポが前輪駆動であるのに対し、ゴリアテは後輪駆動だったことだ。

三輪車の前の一輪だけを回すのと、後ろの二輪を回すのではやはり力強さが違う。当時の広告でもゴリアテGD750は後輪駆動であることが強調されていた。いわく「信頼性の高い後輪駆動で、雪の路面も大丈夫。どんな坂道でも乗り越えます。」「後輪駆動だから四輪車の走行特性を備えています。」と、そのメリットを謳い上げたのである。

ゴリアテ  GD750の実車
ゴリアテGD750
旧車イベントで見られた1953年製の車である。美しくレストアされている。
Photo: Eckhard Henkel / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 DE, CC BY-SA 3.0 DE, via Wikimedia Commons】
テンポ ハンシート
テンポ ハンシート
ゴリアテGD750と同じ時期に売られていたドイツのテンポ社の三輪で、名前はハンシート。ゴリアテとほぼ同じスタイルだが、こちらは前輪駆動だった。
Lokilech, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】

さらにゴリアテは、この三輪トラックのクオリティの高さを訴えるために記録用の特別車両を製造。エンジンのパワーや車体の耐久性を証明して見せた。1951年の8月、フランスのパリ近郊モンレリにあるサーキットで平均時速155kmで2時間以上走り続け、38の世界記録を打ち立てたのである。

三輪トラックでここまでやるかという感じだが、さすがにヨーロッパの自動車メーカーである。レース好き、記録好きなのである。日本のオート三輪のメーカーとはやることが一味違う。

多くの商店や企業で活用した。

さらにゴリアテGD750は、バリエーションが豊富なことでも特徴的だった。荷台の付いたピックアップタイプをはじめ、パネルバンや木製の貨物室のついたタイプなどがあった。ボディタイプのバリエーションは実に26種もあり、ユーザーの需要に応じた提供ができたようである。

しかも三輪であるため価格が安く、特にバンタイプは家具や生活用品などを製造する小規模なメーカーに人気があったそうだ。小型で小回りの効く三輪車は、配送用などに便利だったのだろう。また、移動販売店として利用されていた例もあるようだ。

このページの最初に掲げたゴリアテGD750は、荷台に「Sinalco」というロゴマークが入っている。これはソフトドリンクのロゴで、ヨーロッパではコカ・コーラと肩を並べるほど有名な飲み物だそうだ。そのSinalcoのルート配送車として活躍したのだろう。これを見ても、街を走るゴリアテGD750は、人々にとってかなり身近で親しみのある車だったことが想像できる。

Sinalcoの飲料が描かれた看板
sinalcoの広告
コーラとドリンクの写真の入った看板である。温度計も付いているので宣伝用の景品かもしれない。
Alf van Beem, CC0, via Wikimedia Commons】
ゴリアテのパネルバン
ゴリアテのパネルバン
荷台部分が覆われたパネルバンである。側面にスパークプラグの絵とともにBOSCHとあるので、自動車部品販売店か自動車修理工場のトラックなのだろう。
RudolfSimon, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons】

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ドイツの三輪トラックと日本のオート三輪。