フィアット 508C

508の愛称について考える・・・。

イタリアの人気車には愛称が付く。508Cによく似た二人乗り小型車フィアット500にはトポリーノという愛称がある。トポリーノとはハツカネズミを意味する言葉だそうだが、当時すでに庶民の人気者であったディズニーのミッキーマウスのことでもある。そしてこの508にも、508Aの時から愛称が付いている。バリッラと言う。

バリッラとは何か。バリッラは、18世紀イタリアのジェノヴァにいた少年の愛称でもある。その少年には、当時ジェノヴァを占領していたオーストリア軍の兵士に石を投げ、それがきっかけで市民が蜂起してオーストリア軍を追い出すことができたという話がある。そんな逸話が元になっており、「小さな英雄」といった意味を持つ名前でもあるのだ。

フィアットは、小型でスタイルも性能も優れたこの508に、ジェノヴァの小さな英雄の名を付けたのである。

石を投げる少年の姿を描いたフィアットの広告
フィアットの広告
1932年の雑誌に載った広告のようである。上にはグリルにバリッラと書かれたフィアット508が描かれており、前には石を投げる少年の姿が大きく書かれている。彼こそジェノヴァの小さな英雄なのだ。
Davide Mauro, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons】

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