ディナXに続いて登場した、ディナZ。
しかし、このパナールディナXも、ルノーやシトロエンなど他のメーカーの小型車のようにヒットを飛ばすことはできなかった。やはり、ディナXがいかに個性的と言えども、広大な販売網を確立していた大メーカーには叶わなかったのだ。そこでパナールは、1953年にディナZを登場させる。Xに続いてZである。「Z」にもやはり未知という意味がある。

ディナXに続いて出したパナールの大型車。上の写真は、タクシー仕様車である。

ディナXに負けず劣らずのユニークなデザインである。
ディナZもやはりアルミボディで空冷式水平対向エンジンである。ディナXと同様の機構ではあるが、車全体の大きさが違った。アルミボディの軽量を活かし、今度は大型車を出したのである。2000ccクラスのサイズで、なんと車両重量は650kg。現在の日本の軽自動車よりも軽い。850ccのエンジンで時速130キロを出した。
そして、そのデザインもまた“未知のもの”であった。ボンネットとフェンダーを一体にした現代的なスタイルでありながら、フロントはディナXに似て「2つの目玉におちょぼ口」といった顔をしている。
しかし、この車も12年後にパナールの乗用車部門がシトロエンに吸収合併されると販売が終了した。Zには未知という意味の他に「最後」という意味もある。ディナZは、文字通りパナール独自の乗用車の最後を飾った車となった。
パナールの工場内で撮ったフィルムである。ボディ素材のアルミがいかに軽いかがわかる。
パナールディナXとZ。フランスの合理主義とこだわりのデザインをつぎ込んだこの車は、フランスの老舗自動車メーカーが作ったあだ花だったのだろうか。
デザインに対して好き、嫌いはあろうが、そこには他の車には見られないセンスや利点があることは確かである。さらに、アルミ製の軽量ボディを低排気量のエンジンで動かすというこの車の基本コンセプトは、一定の評価も得ている。
パナールディナは、そんな点でやはり戦後の一般向け小型車として特筆すべき車と言えるのではないだろうか。
